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お爺さんに不幸をして酬いを受けた話し

お爺さんに不幸をして酬いを受けた話し

最近、年寄りを労らない、それどころかお年寄りを食い物にする、詐欺事件の話をよくききます。なんか暮らしにくい世の中いなってきました。自分だけのことを考え、打算的でゆとりがないく、計算高くて抜け目がない人が、湧き出ているようです。

「老兵は去るのみ」と言う言葉があります。年老いてきたら後進に道を譲り、若い人を立てなくてはいけなことを言っています。今の世を作ってくれた先輩であるお年寄りに対し、労苦や骨折りを慰めて感謝し、今までの労苦や骨折りに感謝することを忘れてはならにでしょう。
また「老兵は死なず」と言うことばがあります、年老いてきたら、いつまでも最前線にいるのではなく、前線を退いて、後方で若い人をもり立てることをしなくてはならないでしょう。

アイヌの昔話に次のような話を読んだことがります。
「エカシオッパレ お爺さんに不幸をした話し」
私はお爺さんに育てられました。お爺さんは水を汲むときも柴を刈るときも、どんなときも唄っていました。私が大きくなって、お爺さんの歌を聞いていると、それは歌ではなく泣いているのでした。
「お爺さん、どうしていつも泣いてばかりいるの」と聞いてみました。
お爺さんは昔の話をしました。
「おまえが産まれたばかりの頃、この村はたくさんの人が住んでいた。だけどある年に、病がはやてみんな死んでしまった。残ったのは私とおまえだけになっった。みなが死んだので村から逃げるとき、何かをもちだすと、病の神は追いかけてくるといわれ、私は何も持たずにおまえだけを抱えて逃げた。こうやって隠れて生活しているのだ。村人やおまえの父母のことを思うと、涙がでてとまらないのだ」
お爺さんは年を取っているので、熊や鹿を捕らえることができないので、ウサギやキツネを捕ってきます。お爺さんは私には、肉がたくさんついている方を私にくれて、お爺さんは骨をシャブったりしていました。
山で取ってきた薪も、私の方にはよく燃える方をくべ、お爺さんの方は乾いていない方をくべていました。
私は大切に育てられました。今では私がお爺さんに替わって、獣を獲ることができるようになりました。
お爺さんは泣いてばかりいたので、目がだんだん見えなくなり、ついにはまったく見えなくなりました。自分が食べなくても、私には美味しいものを沢山たべさせて、可愛がってくれたお爺さんですが、だんだんお爺さんが嫌いになってきました。
お爺さんの目が見えないのをいいことに、肉や魚の美味しいところは私が食べ、骨とか筋とかばかり食べさせていました。
私が座るところにはよく乾いた薪をくべ、お爺さんのところは生乾きの、煙のでる薪をくべていたので、いつもお爺さんは咳き込んでいました。しかしお爺さんはひもじいとも煙いとも、言わなかったです。
わたしは、お爺さんが早く死んでしまえばいい、そうすれば一人どこかで、自由に気ままに暮らせるのにと思うようになりました。お爺さんへの意地悪も露骨になり、食事も三度から二度一度になっていったが、お爺さんは一言も文句もいわず、お爺さんはだんだんやせ細り弱っていきました。
だいぶ弱くなってきたので、間もなく死んでしまうだろう、どこかに捨ててきたらと思いました。そしてある日お爺さんを置き去りにして、川上に向かって歩きはじめました。
家を出てしばらくすると、川辺に柳の木が立っていました。木には桑の蔓がからみ、沢山の桑の実がなっていました。わたしは、桑の実が食べたくなり木に登り、桑の実を一粒二粒口に入れました。すると急に体の力が抜けて、動くことができなくなりました。
自分の体をよく見ると、桑の蔓が体中に絡まり蔓が体に突き刺さっているのです。そしてお爺さんのことを思い出し、思わず「お爺さん! 助けて!」
すると、上流から一艘の丸木舟に乗って二人の若者が下ってきました。若者は舟から降り、私を棹でめった打ちに叩きつけました。「お爺さんにひどい仕打ちをしたのに、助けてくれとはよく言えたものだ。いつまでも桑の蔓に刺されているがいい。お爺さんにした仕打ちを火の神は見ておられた、火の神がお前に罰を与えているのだ。この親不孝め、年寄りを粗末にし不幸にした者は、こうされることを思い知れ。」と言いながら二人は、私をさんざんに打ちのめし、丸木舟で川を下っていきました。
それからというもの、川を下ってくる船は、必ず私を打ちのめしてから、下っていきました。わたしは死ぬに死ねず、夏は日照りに焼かれ風雨に曝され、冬は寒風に吹かれ雪に打たれ凍えるばかりです。
桑の実を食べにくる鳥に、糞をかけられながら、体の肉は溶け出してしまい、骨ばかりになってしまったが、頭だけは生きていて、何年も何十年も苦しい思いをしているのです。
「だからいまいる子どもたちよ、おじいさんおばあさんに、不幸をしてはいけません」と言いながら一人の子どもが死んでいきました。
(アイヌの昔話 萱野茂 平凡社ライブラリーより)

深沢七郎作の小説[楢山節考]を連想しました。信州の貧しい寒村でのことですが、本土の人たちの中には、このアイヌの子供のようなことがあったのですね。しかし、アイヌの人たちは、年老いた人を大切にしない理不尽さを戒めて、お年寄りを大切にしないといけないと、語り継いでいるのですね。

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