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5つの「蜘蛛の糸」

五つの『蜘蛛の糸』

芥川龍之介の小説に『蜘蛛の糸』がある。
この小説は龍之介の独創の創作ではないです、龍之介は日本の古典などに題材を見つけて創作活動を行っているが、この『蜘蛛の糸』もその一つです。
そこで、この話とよく似た話がいくつもあります。

・「キリスト伝説集」の『わが主とペトロ聖者』
・「スペイン民話集」の『聖カタリナの母親』
・鈴木大拙が訳したポール・ケーラスの『因果の小車』
・ドストエフスキイの「カラマーゾフの兄弟」にある『一本の葱』の話

これらは、仏教的に考えると、悪い事や良い事をすれば、その行いは車輪がぐるりと回る様に、いずれは自分のところに帰って来ると因果応報の思想といえます。。

◆『わが主とペトロ聖者』の話は、
ペトロ聖者が、自分の母親が地獄に堕ちているので、イエスに救済して欲しいと頼んだところ、イエスは天使にペトロの母親を連れて出すよう命じます。
しかし、天使にかかえられた助けられる母親を見た、他の地獄の亡者たちは一緒に救われようとしがみついたので、母親は自分だけが助かろうと、亡者を引き剥がしたところ地獄の落ちてしまい救われることがなかった。

◆『聖カタリナの母親』の話は
カテリーナは死後天国で主イエスと聖母マリアに可愛がられていたが、母が悪態をつくという罪から地獄へ落ち手いるのを知る。カテリーナは、主イエスと聖母マリアに母を天国に入れて下さいと頼んだ。聖母マリアに命じられた天使はカテリーナの母親を地獄から天国へ連れて行こうとする。天国に行こうとするカタリーナの母親に他の魂がしがみ付き一緒に天国へ行こうとした。そこでカテリーナの母親は「天国へ行きたければ私の様に聖女を娘に持て」しがみついた魂に悪態をついたので地獄に戻されてしまった。カテリーナは再び同じ頼み事を主イエスと聖母マリアにするが、聞き入れられなかったため、自ら天国を離れ母親のいる地獄へ移って行った

◆『因果の小車』
悪事を働いていた盗賊マハードータが、仲間の裏切りにあい瀕死の重傷を負った。手当てをしてくれた僧に懺悔しながらたずねた。
「私は多くの悪事を働き、良いことは一つもしていない。そのような私でも罪の網から遁れられるのか。それとも地獄に落ちるしかないのか、解脱の道を聞くことができないのか」
僧は、「因果応報で罪業は来生に報いる。だが、真の教に帰して、我執の妄念を除いたものは、一切の情念罪慾を離れて、自他を利生し、救われる」と語り、カンダタの蜘蛛の糸の話をした。(蜘蛛の糸の話は・・・略・・・)
このあとは、〈我執の妄念〉と〈信心の一念〉の不可思議な力について説かれている。
信心の一念は解脱の道に至るのだが、我執の念にとらわれると、カンダタのように独り占めしようとするとその糸は切れ地獄に落ちる。地獄とは我執であり、涅槃は正道の生涯に外ならないと、僧は説いた。
すると盗賊マハードータは、「私に蜘蛛の糸を取らせてくれたら、一心に糸を登るだろう。」と決意し、盗んだ財宝のありかを伝えて死ぬ。
一本の「蜘蛛の糸」は、地獄から極楽へ抜け出る道具ではなく、「信心の道」であった。
カンダタが再び地獄に落ちたのは、信心の道を信じられなかったからで、我執の念に囚われていたからとなる。そして、マハードータは信心を獲得して浄土に昇ったとなる。
「蜘蛛の糸」は「二河白道」と云え、「汝一心に正念してただちに来たれ、我よく汝を護らん。」
*『二河』は「火の河=瞋恚」と「水の河=衆生の貪愛」、「白道」は浄土往生を願う清浄の信心。

◆「カラマーゾフの兄弟」の『一本の葱』
昔あるところに、意地の悪い女が住んでいて、ぽっくり死んでしまた。死ぬまでひとつとして美談がなく。悪魔たちはその女をつかまえ、火の湖に投げ込みました。
その女の守護天使はこの女のが行なったただ一つの美談を思い出し、神さまに告げました。「この人は野菜畑で葱を一本引き抜き、乞食女に与えました」。すると神さまは天使に「その葱を取ってきて、火の湖にいるその女に差しだしなさい。それにつかまらせ引っぱるのです。もし火の湖から岸に上がれれば、天国に行かせてあげよう。でもその葱が切れたら、火の湖に残のです」。
天使は女のところに駆け出し、葱を差しだし「これにつかまって上がってきなさい」。といい、天使はそろそろと女を引きあげにかかりました。すると一歩のところで、罪びとたちが、女がひっぱり上げられるのを見て、一緒に引きあげてもらおうと女にしがみつきました。
すると女は、罪びとたちを両足で蹴り落とし罪人を罵りました。そのとたん、葱はぶつんとちぎれて、女は湖に落ち、今も火の湖で燃えつづけているのです。天使は泣き出しそこを立ち去りました。

◆芥川龍之介『蜘蛛の糸』
釈迦はある朝、極楽を散歩中に蓮池を通し地獄を覗き見ると、罪人どもが苦しんでいる中のカンダタがいた。カンダタは殺人や放火をする凶悪な泥棒だが、過去に一度だけ蜘蛛を踏み殺しかけたが、それに気づき命を助けた。釈迦はそれを思い出し地獄から救い出してやろうと、一本の蜘蛛の糸をカンダタめがけて下ろした。
暗い地獄で天から垂れて来た蜘蛛の糸を見たカンダタは「この糸を登れば地獄から出られる」と考え、糸につかまって昇り始めた。ところが途中で下を見下ろすと、数多の罪人達が自分の下の蜘蛛の糸に群がってしがみついている。このままでは糸が切れてしまうと思いカンダタは、「この糸は俺のものだ。下りろ。」と叫んだ。すると蜘蛛の糸がカンダタすぐ上で切れ、カンダタは地獄の底に堕ちてしまった。
無慈悲に自分だけ助かろうとし、地獄へ堕ちてしまったカンダタをさもしく思い、釈迦は蓮池から立ち去った。

この四つの話のどれも、地獄に堕ちた者が、救い出される手蔓を見つけ。それを独り占めにしようとした結果、それがかなえられなくなるのが共通した筋です。
そこには、自分だけがよければよいという我執に囚われたままだと、地獄からは抜けられないことを教えられる。そそして、『因果の小車』にあるように、マハードータは最後に盗んだ財宝の隠し場所を明かすことで、信心を獲得して浄土・天国に登れたといえる。

◆『蜘蛛の糸』に続編を作った人がいる。芥川虎之助言うらしい。大まかな粗筋は次のようなものです。
蜘蛛の糸が切れて、地獄に戻ったカンダダは、あの糸は生前にたった一度の善行から来ている。善行をすればもう一度糸が垂れてくるかもしれないと思った。
地獄で過ごしているなかで、道を譲ったり、新入りの罪人に声かけたり話を聴いていると、罪人たちの顔が和らいでいるのに気づいた。カンダタはそれが面白くなり、亡者の話を聴くことを続けた。亡者の話を聞くというカンダタの噂が広がり、カンダタに話を聞いてもらうため亡者が集まってきた。
ある日。カンダダの前に雲の隙間から、再び蜘蛛の糸が降りてきた。「すっかり忘れていたが、今度は慎重に登ろう。」と思った。そこで、この糸は皆でぶら下がったら切れてしまう。1人ずつなら上の界へ確実に登れる。自分がこの糸を登ると、亡者が後からまた登ってくる。それでは元も子もないので誰かが、1人ずつ登るように指図しないといけない。それならとカンダタは自分が最後に登ることにして、亡者を1人ずつ登らせてやろうと考えた。
亡者たちは、雲の隙間から差し込む光に気づいて集まってきた。カンダタは亡者に向かって言った。「この糸は俺の元へ降りてきた糸で俺のものだ。だが、1人ずつなら切れないから、誰でも登っていけば上の界へ出られる。俺が下で見張っていてやるから、1人ずつ順番に登っていけ。そうすればいずれ地獄から出られる」。そう言って、カンダダは糸の下端で罪人たちの話を聞き、登る順番を決めて1人ずつ登らせ始めた。亡者の話を聞いているうちに、亡者がどれだけ反省しているかが判るようになり、それを亡者に説得できるようになってきた。亡者もカンダタの言うことを聞いた。
地獄から亡者がいなくなることはないので、カンダダはずっと地獄に居続けていた。カンダダも救われたい一心で始めた話を聞くことが誰かを救うことになっていることに気づき満足をしていた。お釈迦様はカンダダのその様子を見て、カンダタを見守り続けた。

さてこの五つの話どれがいいだろうか。私は、『因果の小車』の「二河白道」の話がその中心にあると思う。
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  • 終戦の日の前後のテレビ番組
    アジシオ次郎 (08/22)
    こんにちは。

    毎年この時期は戦争にちなんだドキュメンタリー番組をやるけど、NHKが積極的にやるのに民放はニュースでミニコーナー程度しかやらないと言うのはどうか
  • 安倍内閣改造
    竹林泉水 (08/08)
    > 一強なのに天狗になって周りを見ない姿勢のせいで支持率が低下したのに、それを教訓にしないようでは自浄能力がないというか学習能力がないと言われるだけです。ア
  • 安倍内閣改造
    アジシオ次郎 (08/05)
    こんにちは。

    お友達内閣と揶揄された反省から、今回は異なる派閥からすすんで入れた改造内閣、バランスいいとはいうものの、女性閣僚が2人だけというのは男性優位色が
  • 見ざる聞かざる言わざる
    竹林泉水 (07/30)
    いつもコメントありがとうございます。
    三猿の教えは、子どもより大人の方が三猿について考えないといけないでしょうね。

    一つのことしか知らない大人になるのは、人それ
  • 見ざる聞かざる言わざる
    アジシオ次郎 (07/26)
    こんにちは。

    周りをよく見る・すすんで自分の意見を言う・人の話を聞く。当たり前の常識だが、子供に説くのも大事だが大人も改めてそれを認識してそれに基づく正しい行
  • アベ政治はクーデター
    竹林泉水 (07/19)
    政権を握っているのでクーデタだと言えるのでは

    しかし、安倍晋三の頭の中の辞書には、民主主義の言葉はあるが、政治家としての誠実さをなかなか感じることができないので
  • アベ政治はクーデター
    雲と風 (07/18)
    勉強になりましたが、「安倍政権はクーデター」でしょうか? 権力と威嚇によるテロリズムだと思います。内閣府の中の一派が壊憲と日本の民主主義制度の堕落無力化を共謀し
  • 教育福祉などへの株式参入は
    竹林泉水 (07/12)
    なんでも自由競争になれば、サービスの質が向上すると考えるのは間違いで、鉄道などで見ると都市部はサービスが向上するが、過疎部では反対で最悪の場合は撤退になります。
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    アジシオ次郎 (07/10)
    おはようございます。

    教育や福祉に株式参入することは、教育や福祉をビジネスに利用しかねないし、アメリカ式の市場主義経済に基づく価値観を正当化しかねないです。た
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