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天動説 地動説

児童文学者であり、反戦活動家のジャーナリストであった、吉野 源三郎(1899年 - 1981年)の代表作、『君たちはどう生きるか』がある。吉野は昭和を代表する進歩的知識人として知られています。

    君たちはどう生きるか

その『君たちはどう生きるか』の主人公はコペル君という少年だが、本名は本田潤一という、なぜコペル君というあだ名がついたか。そのいきさつはいわれはこの話の初めにでてきます。
コペル君が叔父さんと霧雨の降っているときに銀座にいったとき、潤一少年はデパートの階上から銀座の街の様子を眺めていて、叔父さんに「人間て、まあ、水の分子みたいなもんだね。」といいました。

そのことに対して、叔父さんはいたく感心して、次のような話をしました。

・・・・前略・・・・
 もちろん、世の中の波というものも、一つ一つの分子の運動か集まって動いてゆくのだし、人間はいろいろな物質の分子とはわけのちがうものなんだし、そういうことは、君がこれから大きくなってゆくに従って、もっともっとよく知ってゆかなければいけないけれど、君が広い世の中の一分子として自分を見たということは、決して小さな発見ではない。
 君は、コペルニクスの地動説を知ってるね。コペルニクスがそれを唱えるまで、昔の人は、みんな、太陽や星が地球のまわりをまわっていると、目で見たままに信じていた。これは、一つは、キリスト教の教会の教えで、地球が宇宙の中心だと信じていたせいもある。しかし、もう一歩突きいって考えると、人間というものが、いつでも、自分を中心として、ものを見たり考えたりするという性質をもっているためなんだ。
 ところが、コヘルニクスは、それではどうしても説明のつかない天文学上の事実に出会って、いろいろ頭をなやました末、思い切って、地球の方が太陽のまわりをまわっていると考えて見た。そう考えて見ると、今まで説明のつかなかった、いろいろのことが、きれいな法則で説明されるようになった。そして、ガリレイとかケプラーとか、彼のあとにつづいた学者の研究によって、この説の正しいことが証明され、もう今日では、あたりまえのことのように一般に信じられている。小学校でさえ、簡単な地動説の説明をしているようなわけだ。
・・・・中略・・・・
 こういうことは、君も『人間はどれだけの事をして来たか』を読んで知っているにちがいない。が、とにかく、人間が自分を中心としてものを見たり、考えたりしたがる性質というものは、これほどまで根深く、頑固なものなのだ。
 コペルニクスのように、自分たちの地球が広い宇宙の中の天体の一つとして、その中を動いていると考えるか、それとも、自分たちの地球が宇宙の中心にどっかりと坐りこんでいると考えるか、この二つの考え方というものは、実は、天文学ばかりの事ではない。世の中とか、人生とかを考えるときにも、やっぱり、ついてまわることなのだ。
 子供のうちは、どんな人でも、地動説ではなく、天動説のような考え方をしている。子供の知識を観察して見たまえ。みんな、自分を中心としてまとめあげられている。電車通りは、うちの門から左の方へいったところ、ポストは右の方へいったところにあって、八百屋さんは、その角を曲ったところにある。静子さんのうちは、うちのお向いで、三ちゃんところはお隣りだ。こういう風に、自分のうちを中心にして、いろいろなものがあるような考え方をしている。人を知ってゆくのも同じように、あの人はうちのお父さんの銀行の人、この人はお母さんの親類の人という風に、やはり自分が中心になって考えられている。
・・・・中略・・・・
 しかし、大人になるとこういう考え方をするというのは、実は、ごく大体のことに過ぎないんだ。人間がとかく自分を中心として、ものごとを考えたり、判断するという性質は、大人の間にもまだまだ根深く残っている。いや、君が大人になるとわかるけれど、こういう自分中心の考え方を抜け切っているという人は、広い世の中にも、実にまれなのだ。殊に、損得にかかわることになると、自分を離れて正しく判断してゆくということは、非常にむずかしいことで、こういうことについてすら、コペルニクス風の考え方の出来る人は、非常に偉い人といっていい。たいがいの人が、手前勝手な考え方におちいって、ものの真相がわからなくなり、自分に都合のよいことだけを見てゆこうとするものなんだ。
 しかし、自分たちの地球が宇宙の中心だという考えにかじりついていた間、人類には宇宙の本当のことがわからなかったと同様に、自分ばかりを中心にして、物事を判断してゆくと、世の中の本当のこともヽついに知ることが出来ないでしまう。大きな真理はそういう人の眼には、決してうつらないのだ。もちろん、日常僕たちは太陽がのぼるとか、沈むとかいっている。そして、日常のことには、それで一向さしつかえない。しかし、宇宙の大きな真理を知るためには、その考え方を捨てなければならない。それと同じようなことが、世の中のことについてもあるのだ。
以下略・・・・

叔父さんあ、潤一君が、自分中心の天道説のような考えでなく、地動説の考えを感じたことに感心し、その潤一君の考えの発見を忘れないようにコペルニクス君とよび、それがいつしか縮まってコペル君と言うようになたそうです。

この話、今の日本の政治家や大人たちの様子をみていると、この地動説と天動説の話を説諭したいです。

佐藤優氏は「知性とは何か」で次のようにいっている。「反知性主義を大雑把に定義するならば、「実証性や客観性を軽視もしくは無視して、自分が欲するように世界を理解する態度」である」
そして、リチャード・ホーフスタッターは、「反知性主義は、思想に対し無条件に敵意をいだく人々によって創作されたものではない。まったく逆である。教育あるものにとって、もっとも有効な敵は中途半端な教育を受けた者であるのと同様に、指折りの反知性主義者は通常、思想に深くかかわっている人びとであり、それもしばしば、陳腐な思想や認知されない思想にとり憑かれている。反知性主義に陥る危険のない知識人はほとんどいあに。一方、ひたむきな知的情熱に欠ける反知識人もほとんどいない。」。つまり、無教養な人が反知性主義に陥るのではなく、一定の知識と教養がそれに加え情熱がある人と言うことになる。そうなるとつまり、安倍首相は祖父の夢をかなえようと、夢見るロマンチストと言えるから、そのロマンにまっしぐらに突っ走ってしまうことにより、反知性主義に陥ってしまっていると言えるのではないだろうか。

そのような、反知性主義である人の言うことに聞く耳をかさず、自分の思い通りに事を運ぼうとする。まさに自分が宇宙の中心で、天が動いているのだと言わんばかりの、国会運営は手前勝手な考え方に陥ってしまい。歴史の流れの中の国際的なもの真相が判らなくなり、自分に都合のよいことだけしか見えなくなってそれに基づいて判断してしまいます、そうなれば国には滅んでしまいます。

今の安倍政権の閣僚に読んでもらいたい本です。
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