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民主主義 文部省 報道に対する科学的考察

これで、第六章はおわりです。だんだん、与野党もそうだし、企業もそうだし、多くの団体の宣伝活動は、非常に巧妙になってきています。ここにかかれている「報道に対する科学的考察」は古びた者かもしれませんが、まだまだ有効です。国民一人一人が政治に関心を持ちつづけ、賛同しようと異を唱えようと、自分の考えを表明して行くことが大切です。
いまは、インターネットなどで、情報を入手することもできます。また海外の情報もリアルに入手できます。日本のマスコミだけでなく、研究者や学者も、自分の考えを有料で無料で訴え表明しています。それらにより、たとえ、マスコミが権力者に乗っ取られても、反対の考えを知ることができます。本当の力ず善いものです。ただ、気をつけないといけないことがあります。インターネットの検索システムで、ある関心のあるキーワードで検索をしていくと、次からそれに関する同じようなことが、検索にヒットしやすくなります。私はこのシステムの名前を知りませんが、気をつけないといけないことです。知らないうちに自分の考えの近いものばかりを調べてしまい、それに対する反対の立場の考えや意見を見ることが少なくなってしまいます。それでは、偏った考えになってしまたりします。また、自分と違う意見の人の考えを、正面から反対の意見を言ったり、正しく討論をしたりすことができなくなったりします。また、時々、街灯演説などで、相手の罵ったり、見下したり、根拠のないありもしない言葉で攻撃をしている人を見かけます。そのような人の多くは、情報収集するのに、自分の意見に近いことしか、見ていない人が多いと思います。そのようになれば、自分の意見と違う人と、正面から討論できなくなります。お互いに、自由に明確にわかりやすく、言葉を交わすことができるようになりたいものです。


民主主義 文部省編纂
第六章一目ざめた有権者

四 宣伝機関

現代の発達した宣伝技術で一番大きな役割を演じているのは、新聞と雑誌とラジオである。その他、ポスター・ビラ・映画・講演などもよく利用されるが、今言った三つは特に重要であり、中でも新聞の持つ力は最も大きい。新聞は、世論の忠実な反映でなければならない。むしろ新聞は確実な事実を基礎として、世論を正しく指導すべきである。しかし、逆にまた新聞によって世論がねつ造されることも多い。
新聞が宣伝の道具として持つ価値が大きいだけに、これを利用しようとする者は、巨額な金を投じて新聞を買収しようとする。あるいは、自分の手で新聞を発行する。その新聞がどんな人物により、またどの政党によって経営されているかがはっきりしていれば、読む人もそのつもりで読むから、大した弊害はない。しかし、それをそうと見破りにくいような名まえの新聞でじょうずに宣伝をやると、国民の考えを大きく左右することができる。違った名まえの幾つもの新聞を買収すれば、いっそう効果がある。そのようにして、外形だけは民主主義の世の中にも金権政治が幅をきかせる。「地獄のさたも金次第」という。金が万能の力をもって世論を思う通りに動かすようでは、ほんとうの民主主義は行われえない。
新聞の経営には金がかゝる。その費用は、購読者が払う新聞代を集めた額よりもずっと多い。それなのに、どうして新聞の経営が成り立って行くのだろうか。ほかでもない。その足りない部分は、広告の収入でまかなわれるのである。したがって、購読者も、それだけ安い新聞代でおもしろい新聞が読めることになる。時には、新聞を発行する費用の半分以上が広告の収入でまかなわれることさえある。それてみても、新聞広告がどれほどきゝめがあるかということがわかるであろう。広告がきくということは、新聞が宣伝機関として、それたけすばらしいねうちを持っていることを物語るのである。広告でさえそうなのだから、記事をじょうずに、おもしろく、人の目をひくように載せ、珍しい写真などをかゝげれば、どんなに効果があるかは、想像にあまりがある。同じ事件を取り扱う
にしても、大きな活字で見出しをつけるのと、小さくすみの方にかゝげるのとでは、まるできゝめがちがう。無根の本実を書いて人を中傷すれば、あとで小さく取り消しを出しても、その人の信用は地に落ちてしまう。世論を動かす新聞の力は、このように大きい。それだけに、新聞を経営する人たちの責任は、きわめて重大であるといわなければならない。
これと同じようなことが、雑誌その他の定期刊行物についても言える。雑誌も、発行部数の多い大雑誌になると、宣伝機関として大きな利用価値がある。したがって、雑誌社の経費のかなりの部分が広告の収入でまかなわれる。
それよりも、もっとおもしろいのはラジオである。今の日本では、すべての放送局が一つの放送協会によって経営され、その経費は聴取者の払う料金でまかなわれて、ラジオを広告につかうということは行われていない。ところが、アメリカでは、六百以上の私設放送局がある。東京の半分ぐらいの都会に幾つもの放送局があって、いろいろとおもしろい番組を作って競争している。しかも、聴取者からは、いっさい料金を取らない、放送の中に広告を組み入れ、その料全て経営しているのである。
このように、新聞や雑誌やラジオは広告にそのおもな財源を求めているから、なるべく多くの広告を得ようとして競争する。広告を得るために、特に努力しないでも、広告主の方から広告を頼みに来る大新聞や大雑誌ならば、わざと広告主のごきげんを取るようなことをする必要はないが、そうでない場合には、大広告主の気に入るような編集をしたり、その感情を害するような記事を載せることを恐れたりすることもありうる。そういう新聞や雑誌だと、広告主が集まってこれらの宣伝機関に圧力を加え、自分たちにとって不利な法律案が議会を通ることをさまたげるように、論文や記事の書き方にっいていろいろと注文をつけることができる。その法律案の悪い点を大きく取り上げたり、その支持者の悪口を書いたりさせる。そういう技巧によって、何も知らない読者の気持を動かしてしまうことは決してむずかしいことではない。
一方また、小さい雑誌や地方新聞の中には、土地の有力者を、不利な事実を書くぞと言って脅迫し、それを書かないことの代わりに多額の金を出うせる者などもある。他方には、自分にとって有利な記事を載せさせるため、それらの雑誌や新聞にたくさんの金をそゝぎこむ候補者もいる。そういう悪徳記者や、ずるい候補者がいると、有権者はそれにまどわされて、よい人に投票せず、不適任な人物を選んでしまうということになりがちだ。
新聞記事にはそんな事情でうその書かれることが多いとすれば、それをきびしく監督し、政府が前もって検閲して、そのような弊害を防止すればよいと思うかもしれない。しかし、それはなお悪い結果になる。なぜならば、そうすると、こんどは政府がその権力を利用して、自分の政策のために不利なような論説や記事をさしとめ、その立場にとって有利なことだけを書かせるようになるからである。それは、国民をめくらにし、権力者が宣伝機関を独占する最も危険なやり方である。言論機関に対する統制と検閲こそ、独裁者の用いる一番有力な武器なのである。

   無題2

だから、民主国家では、必ず言論・出版の自由を保障している。それによって、国民は政府の政策を批判し、不正に対しては堂々と抗議することができる。その自由がある限り、政治上の不満が直接行動どなって爆発する危険はない。政府が、危険と思う思想を抑圧すると、その思想は必ず地下にもぐって、だんだんと不満や反抗の気持をつのらせ、ついには社会的、政治的不安を招くようになる。政府は、国民の世論によって政治をしなければならないのに、その世論を政府が思うように動かそうとするようでは、民主主義の精神はふみにじられてしまう。
政治は真実に基づいて行われなければならない。しかも、その真実は自由な討論によって生み出されるということこそ、民主主義の根本の原則なのである。甲の主張と已の立場とを自由に討議させる。甲は宣伝によって国民の心をひきつけ、選挙でも多数の投票を得て、已に対する勝利を占める。しかし、もしも甲の宣伝が真実でなかったならば、その勝利はいつまでも続くだろうか。国民が真実を発見する能力を持たなければ、真実を言った已の立場はいつまでも浮かぶ瀬はないであろう。これに反して、国民にその力さえあれば、甲の人気はやがて地に落ちる。そうして、少数だった已の立場の方が有力になって来る。いや、もしも国民がほんとうに賢明であるならば、初めから甲の宣伝に乗せられて判断をあやまることもないであろう。
だから、自由な言論の下で真実を発見する道は、国民が「目ざめた有権者」になる以外にはない。目ざめた有権者は、最も確かな嘘発見器である。国民さえ賢明ならば、新聞がうそを書いても売れないから、真実を報道するようになる。国民の正しい批判には勝てないから、新聞や、雑誌のような宣伝機関は真の世論を反映するようになる。それによって政治が常に正しい方向に向けられて行くのだ。


五 報道に対する科学的考察

 真実を探究するのは、科学の任務である。だから、うそど誠、まちがった宣伝と真実とを区別するには、科学が真理を探究するのと同じようなしかたで、新聞や雑誌やパンフレットを通して与えられる報道を、冷静に考察しなければならない。乱れ飛ぶ宣伝を科学的に考察して、その中から真実を見つけ出す習慣をつけなければならない。
一、科学的考察をするに当たって、まず心がけなければならないのは、先入観念を取り除くということである。われわれは、長い間の経験や、小さい時から教えられ、言い聞かされたことや、最初に感心して読んた本や、その他いろいろな原因によって、ある一つの考え方に慣らされ、何ごとをもまずその立場から判断しようとするくせがついている。それは、よいことである場合もある。しかし、まちがいであることもある。そういう先入観念を反省しないで物ごとを考えて行くことは、どんでもないかたよった判断にとらわれてしまうもとになる。昔の人は、風の神が風をおこし、地下のなまずがあばれると地震になると思っていた。そういう迷信や先入観念を取り除くことが、科学の発達する第一歩であった。近ごろでも、日本人は、苦しい戦争の時には「神風」が吹くど信じていた。大本営の発表ならばほんとうだと思いこんでいた。そういう先入観念ぐらい恐ろしいものはない。政治上の判断からそのような先入観念を除き去ることは、科学的考察の第一歩である。
二、次にたいせつなのは、情報がどういうところから出ているかを知ることである。読んだり、聞いたりしたことを、そのまゝ信じこむことは、たゞおろかなことであるばかりでなく、また非常に危険である。たから、いつも自分自身に次のようなことを質問してみるがよい。すなわち、だれがそれを書き、それを言ったか。それはどんな連中だろうか。かれらにはそういうことを言う資格があるのか。どこで、どうしてその情報を得たか。かれらは先入観念を持ってはいないか。ほんとうに公平無私な人たちか。あるいは、まことしやかなその発表の裏に、何か利己的な動機が隠されてはいないか。こういった質問を自分自身でやってみることは、確かに科学的考察の役に立つであろう。
三、新聞や雑誌などを読む時に、次のような点に注意する。


   無題3

 イ、社説を読んで、その新聞や雑誌のだいたいの傾向、たとえば、保守か、急進かをできるだけ早くつかむこと。
 口、それがわかったならば、それとは反対の立場の刊行物も読んで、どちらの言っていることが正しいかを判断すること。
 ハ、低級な記事をかゝげたり、異常な興味をそゝるような書き方をしたり、ことさらに人を中傷したりしているかどうかを見ること。
 二、論説や記事の見出しと、そこに書かれている内容とを比べてみること。記事の内容にはだいたいほんとうのことが書いてあっても、それにふさわしくない標題を大きくかヽげ、読者にまるで違った印象を与えようとすることがあるから、標題を見ただけで早合点してはいけない。
 ホ、新聞や雑誌の経営者がどんな人だちか、その背後にどんな後援者がいるかに注意するこど。政府の権力に迎合する新聞を御用新聞というが、政府ではなく、金権階級におもねるような新聞も、御用新聞であることに変わりはない。
四、毎日の新聞やラジオは国際問題でにぎわっている。今日では、国の内部の政治は国際問題と切り離すことのできない関係があるから、国際事情には絶えず気をつけて、その動きを正しく理解することが必要である。戦争前の日本国民は、世界じゅうが日本のやることをどう見ているかをすこしも考えずに、ひとりよがりの優越感にひたっていた。これからも、日本が国際関係の中でどういう立場におかれているかを、絶えずしっかりと頭に入れて、その上で国内の問題を考えて行かなければならない。国際間の宣伝は、国内におけるよりももっと激しく、もっとじょうずに行われるから、いろいろなことを主張し、論争している国々の、ほんとうの目的を察知するように努めなければならない。特に、言論や出版が政府の手で厳重に統制されている国に対しては、そういう注意がたいせつである。
五、世の中の問題は複雑である。問題の一つの面だけを取り上げて、それで議論をすることは、きわめて危険である。たから、ある主張をする者に対しては、問題の他の反面についてどう思うかを聞いてみるがよい。宣伝を読み、かつ聞くたけでなく、逆にこちらからもいろいろと疑問をいだいて、それを問いただす機会を持たなければならない。それには、討論会などを盛んに開くことが有益である。学校などでも、クラスごとに時事問題についての討論会を行うがよい。研究グループを作る時には、反対の考えの人々をも仲間に入れなければならない。それは、科学者の行う実験のようなものである。いろくな場合をためしてみ、いろいろな人の研究の結果を聞くことによって、誤りはたんだんと取り除かれ、共通の一つの真実が見いたされる。そういうふうにして、物ごとを科学的に考察する習慣をつけておけば、それが民主主義の社会で責任のある行動をする場合に、どんなに役に立つかしれない。
要するに、有権者のひとりひとりが賢明にならなければ、民主主義はうまく行かない。国民が賢明で、物ごとを科学的に考えるようになれば、うその宣伝はたちまち見破られてしまうから、だれも無責任なことを言いふらすことはできなくなる。高い知性と、真実を愛する心と、発見された真実を守ろうとする意志と、正しい方針を責任をもって貫く実行力と、そういう人々の間のお互の尊敬と協力と-----りっぱな民主国家を建設する原動力はそこにある。そこにたけあって、それ以外にはない。
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記事へのコメント
  • 茶番の衆議院選挙
    アジシオ次郎 (10/05)
    おはようございます。

    民進党の解体、小池百合子東京都知事が立ち上げた希望の党、ハッキリ言って今回の選挙は乱立の様相を呈しそうですが、野党票割れを起こして自民党
  • 独裁者の国会解散
    竹林泉水 (09/26)
    > 政策に反対表明するための無抵抗なデモ行進、座り込みや集会を無理に解散させようとする警察官たちが、職務とは言え反対する人たちを排除しようとするのを見るとむし
  • 独裁者の国会解散
    風と雲 (09/24)
    民主的な選挙で政権交代がなされるようになり、政府への反対で暴力を使うことは、民衆の支持を失い反発され逆効果になるようになりました。>政策に反対表明するための無抵
  • 独裁者の国会解散
    竹林泉水 (09/24)
    日本人は長いものにはまかれろ、付和雷同性の国民性もあるのは確かだと思います。それは別段日本人に限ったことではないと思います。
    第二次世界大戦でフランス政府はドイ
  • 独裁者の国会解散
    風と雲 (09/23)
    かかる為政者の存在を許してきたのは、日本人の「ながいものにまかれる、お上に任せば・・、なるようにしかならない」と付和雷同性の強い国民性に由来するものではないでし
  • フェイクニュース
    アジシオ次郎 (09/16)
    おはようございます。

    ネットの普及に伴い様々なニュースが見れるようになった昨今、ただ自分の好みに合った情報しか信じないという弊害が出ることもそうだし、多様性を
  • ギャンブル依存症に顔認証は問題
    竹林泉水 (09/10)
    顔認証技術が進み、個人の識別だけに利用されるならまだしも、個人の管理に利用されるのは非常に問題が多いと思います。

    松井知事の発言があまり問題になっていないのも不
  • ギャンブル依存症に顔認証は問題
    アジシオ次郎 (09/09)
    こんにちは。

    いくらギャンブル依存症対策とはいえ、入場確認や顔認証システムを導入するのは一部から「プライバシーの侵害だ」と批判を浴びてもおかしくありませんね。
  • 終戦の日の前後のテレビ番組
    竹林泉水 (08/23)
    国際的な政治・外交問題は素人的な言い方をすれば、早い者勝ちで勝ち逃げすればセーフ的なところがありますね。
    国の名前に「帝国」冠して大日本帝国として、そのころ時代
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