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民主主義 文部省教科書 11

民主主義 文部省教科書
第十七章 民主主義のもたらすもの
五 討論と実行

民主主義の理想は、人間が人間たるにふさわしい生きがいのある生活を営み、お互の協力によって経済の繁栄と文化の興隆を図り、その豊かなみのりをすべての個人によって平和に分かちあうことができるような世の中を築いていくにある。ある一つの国が、与えられた歴史的な条件の下で、どうすればこの理想の実現に向かって一歩でも近づいていけるかは、何よりもまず、その国の政治によって解決されるべき問題である。その方針は、国により事情によって種々さまぐであるが、いかなる方針を採用する場合にも、それを決定するものは国民の多数の意志でなければならない。国民のための政治は、国民自らの力によって発見されなければならない。国民の意志で決めた政治の方針は、ときにはまちがうこどがあるであろう。しかし、政治の決定権が国民の手にあるかぎり、更に国民の意志によって政治の誤りを是正していくことができる。民主主義の理想に一歩一歩と近づいていく道は、それであり、それ以外にはない。
これが、今まであらゆる角度から見てきた、民主主義の根本の態度である。しかし、これに対して、人は不幸にしてなんべんとなく疑いを新たにする。すなわち、そのように、やりそこなってはまたやりなおして、漸進的に理想に近づいていこうとする政治の方針は、なんべんでもやりなおしをしているたけの余裕のある国、余裕のある時代の話である。そんなのんきなことをしている余地のない、せっぱつまった状態では、すみやかにたゞ一つのいちばんよい方針、または、たゞ一つの絶対的な進路を見つけて、国民全部の力をその一筋の道に集中していくほかはないのではないか。それには、あちらになびき、こちらに動く、そのときぐの国民の多数意志で政治の方向を決めていくのではだめなのであって、やはり、少数の賢明な人々に全権をまかせるのがよいのではないか。あるいは、歴史の必然的な法則にしたがって、わき目もふらずに直進することにならざるを得ないのではないか。人は、そのように疑う。そうして、そういう疑いをいだくところに、ふたゝびみたび、独裁主義への誘惑が忍びこむ。
ことに、日本の現状は、そういう疑いをいだくのにつごうのよいような材料がたくさんある。敗戦と戦災とは、日本の産業に大打撃を与えた。その結果として、日本の経済ははなはだしい窮乏状態に陥っている。そこからくる社会の不安は、やゝもすれば議会政治に対する不信の気持を強め、この本で説明してきたような民主主義では日本は救えないのではないかどいう疑問をいだかせる。過激な政治の方針を実行しようとする一部の人々は、そこをねらって、ますく社会不安を増大させるような運動を展開し、危機が迫りつゝあるという宣伝を行い、自分たちの方針についてくる以外に、日本民族の生きていく道はないと思いこませようとする。そうして、国民を、あらゆる分野での闘争にかり立てていこうとする。
なるほど、今日の日本は、実に苦しい、実にむずかしい立場におかれている。こういう状態では、どのような政治の方針によるべきかについて、国民の間に激しい意見の対立が生ずることも、ある点まではやむをえない。
しかし、その中のどの意見といえども、それだけが絶対に正しく、それ以外の意見はすべて絶対にまちかってぃるといいきる権利はない。なぜならば、人間の考えることには、どうしても誤りがありうる。それなのに、自分たちの方針たけが絶対に正しいと信ずる人々は、ひとたび政治の実権をにぎってしまえば、国民をその一つの方針で引っぱってぃくだけで、それに対する批判や反対を許そうとしない。したがって、その方針がまちかっていた場合にも、その誤りを是正することができなくなってしまうからである。そればかりでなく、一つの立場を絶対のものとし、他の立場を絶対に許すまいとすれば、違った意見と意見との間に、妥協の余地のない闘争が行われることにならざるを得ない。国民の生活が一日もゆるがせにできない困難な状態にあるとき、その上うな闘争を激化させることは、自ら求めて、困難を克服する機会を永久に失うゆえんである。だから、意見の対立も、対立する意見の間の争いも、国民が協同の力を発揮して困難に打ち勝つための討論の範囲を越えてはならない。それが、民主義の規律である。

日本の前途に幾多の大きな困難が横だわっていることは、だれの目にも明らかである。それに打ち勝つためにどうすればよいかについて、国民が真剣に討論しようとするのは、当然のことである。けれども、近代国家としての歴史が短く、民主主義の社会生活の経験に乏しい日本国民にとっては、討論が机の上の討論としてからまわりをしてしまう場合が少なくない。たとえば、人々はよく資本主義の弊害を論ずるが、今日の先進資本主義の国々は、資本主義の制度の根本は変えないで、経済の民主化をはかるために、さまざまなくふうをしている。またある国々では、急激な変革を避けつゝ、資本主義と社会主義のそれぐの長所を採った政策が実行されている。大資本に対する中小商工業の立場を守るために、きわめてよく組織された協同組合を発達させたり、大規模な消費組合を作って、消費者の利益をはかったりすることも、行われている。日本では、まだ、そういう経験があまりない。だから、今日の日本としては、いたずらに議論をたゝかわせているよりも、それらの諸外国の実例や経験をよく研究して、それを日本に適合するようなしかたで実行してみる方が早道であるどいえる。議論もたいせつだが、実行してみたうえでの議論の方がもっど効果がある。日本国民のうえに、大きな苦難がのしかゝつていることはたしかだが、その苦難は、それらの建設的な試みを実行してみることを許さぬほどの、絶対にどうすることもできぬ苦難ではない。
かくて、日本の将来の希望は、かゝつて、今まで人類の経てきたいろくな経験を生かして、討論しつゝ実行し、実行しつゝ討論する、国民すべての自主的な意志と努力とのうえに輝いている。議論するのもよい。が、まず働こう。やってみよう。日本人が日本を見捨てないかぎり、世界は日本を見捨てはしない。民主主義の理想は遠い。しかし、そこへいたるための道が開かれうるか否かは、われわれが一致協力してその道を切り開くか否かにかゝつている。意志のあるところには、道がある。国民みんなの意志でその道を求め、国民みんなの力でその道を開き、民主主義の約束する国民みんなの安全と幸福と繁栄とを築き上げていこうではないか。



この「民主主義」の教科書はこれで上下おわりです。
この、最後の討論と実行は、若い人には想像力をもって、終戦のころの日本はどのような状態にあったかを読んで欲しい。また、このころと今の資本主義のありかたが大きく変わってきている、65年程前は、日本は無論そうであるが、世界が戦争により経済の混乱に疲弊し、また、世界大戦が終り新平和の世界での経済活動に希望を持っていたといえる。しかし、いまは経済はグローバル化し多国籍企業の活動が、ゆやもすれば現地工場の労働者を酷使していたりする。また経済的格差が広がり、ごく一部の富裕層が豊かになり、貧困にあえいでいる人はそこから脱け出せないでいる。経済は物を作ることより金融でいかに利益を上げるかになってしまっている。投資家は会社で働く人のことより、自分の株などの配当を貪っることに、一喜一憂しています。そのことを見ると、この「民主主義」の文部省が書いた教科書を読むと、そのことがいかに愚かしく民主主義に反し、それがとどのつまりは自分に降り返ってきたとき、取り返しのつかないことになるかを、考えさせられます。
今の政権は、自分たちを批判するマスコミは「こらしめないといけない」とか、自分たちは「大局を見て」やっているのだとか、「私が責任者だ」とか、「いましかない」などと、国民を煽っています。
そして、国会の質疑では質問に正面から答えようとせず、争点をずらしたりしています。これは、民主主義は反対の意見位対して、討論を行うことに対して逃げているとしか言いようがないです。
この教科書が65年以上前に書かれたのに、新鮮に感じるのは日本の政治がそれだけ成長していないか、劣化しているからなのでしょうか。
ただいえることは、議論しあいながら、「国民みんなの意志でその道を求め、国民みんなの力でその道を開き、民主主義の約束する国民みんなの安全と幸福と繁栄とを築き上げていくこと」だと思います。
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Re: 守りたい「憲法」と「民主主義」

コメントありがとうございます。
わたしは、護憲ではありますが、より発展的に改憲するのは賛成です。改悪したり壊憲には、反対です。
今の政権は、憲法を捻じ曲げて解釈するので、壊憲などで反対です。
民主主義はまどろこしく、真っ直ぐ早く進むもものではないです、みなが意識していないと、壊れてしまいます。
いままさに壊れようとしている。
いま、若い人たちが、声をあげています。これからますます声は大きくなっていくでしょう。
団塊の世代以前の人も、若い時のように声を上げていきましょう。
■竹林乃方丈庵の主から■

・いつも拙文を読んでいただきありがとうござます。
・見聞きしたことを独断と偏見で、気ままに綴ったものです。
・自分のために無責任に書き留めたものですから、読み終わったら捨て下さい。

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記事へのコメント
  • 茶番の衆議院選挙
    アジシオ次郎 (10/05)
    おはようございます。

    民進党の解体、小池百合子東京都知事が立ち上げた希望の党、ハッキリ言って今回の選挙は乱立の様相を呈しそうですが、野党票割れを起こして自民党
  • 独裁者の国会解散
    竹林泉水 (09/26)
    > 政策に反対表明するための無抵抗なデモ行進、座り込みや集会を無理に解散させようとする警察官たちが、職務とは言え反対する人たちを排除しようとするのを見るとむし
  • 独裁者の国会解散
    風と雲 (09/24)
    民主的な選挙で政権交代がなされるようになり、政府への反対で暴力を使うことは、民衆の支持を失い反発され逆効果になるようになりました。>政策に反対表明するための無抵
  • 独裁者の国会解散
    竹林泉水 (09/24)
    日本人は長いものにはまかれろ、付和雷同性の国民性もあるのは確かだと思います。それは別段日本人に限ったことではないと思います。
    第二次世界大戦でフランス政府はドイ
  • 独裁者の国会解散
    風と雲 (09/23)
    かかる為政者の存在を許してきたのは、日本人の「ながいものにまかれる、お上に任せば・・、なるようにしかならない」と付和雷同性の強い国民性に由来するものではないでし
  • フェイクニュース
    アジシオ次郎 (09/16)
    おはようございます。

    ネットの普及に伴い様々なニュースが見れるようになった昨今、ただ自分の好みに合った情報しか信じないという弊害が出ることもそうだし、多様性を
  • ギャンブル依存症に顔認証は問題
    竹林泉水 (09/10)
    顔認証技術が進み、個人の識別だけに利用されるならまだしも、個人の管理に利用されるのは非常に問題が多いと思います。

    松井知事の発言があまり問題になっていないのも不
  • ギャンブル依存症に顔認証は問題
    アジシオ次郎 (09/09)
    こんにちは。

    いくらギャンブル依存症対策とはいえ、入場確認や顔認証システムを導入するのは一部から「プライバシーの侵害だ」と批判を浴びてもおかしくありませんね。
  • 終戦の日の前後のテレビ番組
    竹林泉水 (08/23)
    国際的な政治・外交問題は素人的な言い方をすれば、早い者勝ちで勝ち逃げすればセーフ的なところがありますね。
    国の名前に「帝国」冠して大日本帝国として、そのころ時代
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