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民主主義 文部省教科書 9

今年は戦後70年たち、新憲法ができて69年立ちます。新憲法の下で、日本は自由と民主主義と人権と平和を大切にしてきました。それは、新憲法ができたのと同時に、突然現れたのではないです。日本の国民が不断の努力の末に少しずつ、勝ち取ったり作り上げてきたものです。そしてそれらはいま、空気のようにあるのが当たり前と、感じている人が多いのではないでしょうか。しかし憲法に書かれているように、自由・民主主義・人権・平和は不断の努力をして守り作り上げていかないと、それらは知らないうちに、力を持った者や権力者や利権を守り抜こうとするものたちに、知らないうちに奪われたり、捨てられたり、別のものに置き換えられたりしてしまいます。
いま、目新しく耳障りがよく、なにかよいもののようにみえるが、よく考えると意味のよくわからない言葉をよく聞きます。これらのことばは、トロイの木馬かもしれません。安易にその言葉を鵜呑みに信じては、後で取り返しのつかないことになります。そのうえ、憲法をねじ曲げて解釈して、今まですることができなかったことを、しようとしています。まさに、いま、あたりまえのようにある、民主主義が危機にさらされていると言ってよいでしょう。

いままで、終戦直後に文部省が書いた教科書、「民主主義」の中身を、紹介してきました。いよいよ最後の章になりました。この章は全部で五つに分かれているが、その三つを三回に分けて紹介します。


第十七章 民主主義のもたらすもの
二 民主主義の原動力

民主主義の原動力は、国民の自分自身にたよっていこうとする精神である。自らの力で自らの運命を切りひらき、自らの幸福を築き上げていこうとする、不屈の努力である。自らの力を信じえない者は、何か人間以外のものの力にたよって、局面の展開を期待しようとする。戦争で負けそうになってきたとき、神風が吹くと期待するのも、それである。人間の力ではどうにもならない必然的な法則があって、それによって歴史の変革がなしとげられると信じ、それ以外のものの考え方を排斥するのも、そのような態度の一つであるといってよい。しかし、人間の社会は人間が作っているのである。人間の歴史は、長い世代を通じての、人間の努力と営みとによって築き上げられてきた。人間の作った社会の欠陥は、人間の力で是正できないはずはない。人間の築き上げてきた歴史は、人間の意志と努力とによって更に向上し、発展していくに違いない。このような人間の力に対する信頼こそ、民主主義の建設の根本の要素なのである。
しかも、民主主義における人間への信頼は、英雄や超人や非凡人に対してさゝげる信頼であるよりも、むしろ、こゝに住み、そこに働いている「普通人」に対する信頼である。英雄をあがめ、がいせん将軍を王座にまつりあげるということは、すべての専制君主政の始まりであったといってよい。ヒトラーの非凡な力を信じ、ムッソリーニのことばに随喜の涙を流す態度は、文化のすゝんだ二十世紀の世の中に、独裁主義を可能ならしめる基礎となった。
もちろん、民主主義の下でも、りっぱな人物を選んで、それを国民の代表者とし、その人々の決定に従うということは、必要でもあるし、たいせつでもある。けれども、民主主義の国民は、自分たちの選んだ人々に、無条件の信頼をささげるということはない。りっぱな人物だと思って選んでも、その人々の行動がまちがっていると信ずる場合には、これに対して公正な世論の批判を加え、それをたえず是正していくのは、民主国家の国民の自由であり、権利であり、責任である。そこに国民の主権がある。その根底には、国民の、自分自身に対する信頼がなければならぬ。自分自身に対する信頼を失った国民は、かならず他力本願の独裁主義に走る。民主主義は国民自らが築く。民主主義のもたらすものは、国民自らの努力のもたらすものにほかならない。
およそ人間は、生きていくことを求める。生きている以上、だれしも、できるだけ生きがいのある生活をしていきたいと願望している。死にたいと思う人もないわけではないが、それは、生きがいのある生活をしていくみこみがなくなったためである。したがって、自殺をする人でも、生きがいのある生活を求めていたといってさしつかえない。生存と幸福と繁栄とを求める意欲は、あらゆる人間生活の原動力なのである。
このことは、個人についていえるばかりでなく、多数の個人によって組織された団体にもあてはまる。一つの家族に属する兄弟姉妹は、かれらの家族たちがいつまでも健康で、楽しい生活をつゞけていくことを願う。なぜならば、かれらはその家族の一員であり、その家族はかれらの家族だからである。同様に、野球のチームを組織している少年たち、バレーボールのチームを作っている少女たちは、自分たちのチームが強くなって、試合に勝つことを欲する。なぜならば、それが自分たちのチームだからである。農業協同組合に属している農民たちは、それが自分たちの組合であるという簡単な理由から、その組合が存続し、発展していくことを念願する。そうして、組合員が単にそれを念願するだけでなく、また、組合の運営を少数の役員のみにまかせきっておくという態度にとゞまることもなく、みんなですゝんで組合の発展のために協力するならば、いろいろな困難はあるにしても、組合員の念願はだんだんと実現されていくてあろう。しかも、それが同時に、組合員各個人の福利を増進させることとなるであろう。家族が繁栄し、チームの成績が向上するのも、それとまったく同じ原理によるのであって、それ以外に社会生活を進歩させる秘訣はありえない。
これは、きわめて簡単な、わかりきった事柄である。それなのに、多くの人々はすべての人間が生きがいのある生活をすることを求め、かつ、自分たちの属する団体の向上と発展とを強く念願するものであるというきわめて簡単な事実こそ、民主主義によって何かもたらされるかを最も確かに約束するゆえんであることに、気がつかない。
民主主義の下では、社会または、国家を形作っているおゝぜいの個人は、人間がだれしも持っているこのような要求や念願を、政治を通じて自分たちの力で実現していこうとする。民主主義は、国民のものであって、国王のものでもなく、独裁者のものでもない。民主主義の政治は、国民に属する。だから、よしんば国民が自分たちの利益だけを考えて、他のなにごとをも考えなかったとしても、国民の行う政治は国民各自の福利を増進することになるはずなのである。もちろん、国民の間には、いろいろな利害の対立があるであろう。しかし、それにしても、民主政治は、国民の多数の意見を基礎として行われるから、国民の政治は、すくなくとも国民の多数の利益と合致するようになっていくはずである。まして、国民が、自分たちひとりひとりの利益は、社会全体の利益どはなれてあるものではないことを知り、常に個人の利益と公共の福祉との調和をおもんぱかって行動するならば、「国民の政治」「国民による政治」はかならず、「国民のための政治」になるというのが、民主主義の根底をなす確信なのである。
これに対して、民主主義に疑いを持つ人々は次のように言うであろう。
民主主義は「国民の政治」であるというけれども、それは実は「財産を持った国民」の政治である。国民の中の階級の対立はきわめて根強いものであって、金持たちはかれらの地位を守るためにあらゆる手段を講ずる。したがって、議会政治といっても、それをそのまゝに放任しておけば、うわべは経済民主化の政策をかゝげている政党でも、裏では成金の提供する金て動くどいうことになってしまう。そこで、階級の問の争いはますく激しくなって、その上うな正しくないことの行われる民主主義そのものを否定しようとする動きが強くなっていく。それなのに、民主主義がひろまっていきさえすれば、かならず国民すべての福祉と繁栄とがもたらされると説くのは、すこぶる甘い考え方ではないか。
なるほど、民主主義の憲法を作っても、議会政治を確立しても、独裁主義に走ったり、金権政治が行われたりする危険は、なくならない。そのことは、これまでにもたびく述べてきたとおりである。けれども、それは、国民が少数で政治を引きずっていこうとする人々のせん動に乗せられたり、選挙のときに投票することだけが民主主義だと思って、あとは政治を人任せにしておいたりした結果なのであって、けっして民主主義そのものの罪ではない。今日の多くの民主国家では、政治に参与する権利は、年齢の点を除いては、ほとんど無制限に拡大されている。もしもその権利を持っているすべての国民が、政治のかじを取る者は国民であることをはっきりと自覚し、代表者を選ぶときにも、真に自分たちの利益を守ってくれるような人を選挙し、国会や政府の活動に対しても、常に公正な国政の運用が行われるように、批判とべんたつとを加えていくならば、その結果が「国民のための政治」となって現われえない理由がどこにあるであろうか。国王が権力を持っていれば、国王と、それをとりまく特権階級とにとってつごうのよい政治が行われる。金持によってあやつられ、その思うまゝに動く政府は、金持の利益になるような政治をする。それはあたりまえのことである。そうであるとすれば、政治が「国民の政治」であり、国民が利害得失をよく考えて、政治の方向を決めていくならば、その結果が国民大衆の利益と合致するということも、それと同様にあたりまえのことでなければならないではないか。
たゞ、その場合、おゝぜいの国民が、白分たちには政治のことはわからないと思って、投げやりの態度でいれば、話はもちろん別である。国民がそういう態度だと、かならず荼謀家や狂信主義者が現われて、事実を曲げた宣伝をしたり、必要以上の危機意識を鼓吹したりして、一方的な判断によって無分別な国民を引っぱっていこうとする。そうして、わけもわからずに行う投票の多数を地盤として、権力をその手ににぎる。その結果は、きっと独裁主義になる。
これに反して、せっかく自分たちの手に与えられた政治の決定権を、ふたゝび独裁者に奪い取られてはならないと思う国民は、政治の方向を自分たちで決めていくことによって、自分たちにとって生きがいのある社会を築き上げようと努めるであろう。民主主義は、国民の中のどこにもこゝにもいる「普通人」が、それだけのことをする力を持っているという信頼のうえに立脚している。いいかえると、民主主義は、自分たちの意志と努力とをもってよい世の中を作りだしていこうとする、一般人の自頼心によって発達する。つまり、民主主義は、国民が、自らのためを思って自ら努力するという、きわめて簡単な、きわめてしぜんな法則によって、国民のために最もよいものをもたらすに相違ないのである。

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  • 安倍内閣改造
    アジシオ次郎 (08/05)
    こんにちは。

    お友達内閣と揶揄された反省から、今回は異なる派閥からすすんで入れた改造内閣、バランスいいとはいうものの、女性閣僚が2人だけというのは男性優位色が
  • 見ざる聞かざる言わざる
    竹林泉水 (07/30)
    いつもコメントありがとうございます。
    三猿の教えは、子どもより大人の方が三猿について考えないといけないでしょうね。

    一つのことしか知らない大人になるのは、人それ
  • 見ざる聞かざる言わざる
    アジシオ次郎 (07/26)
    こんにちは。

    周りをよく見る・すすんで自分の意見を言う・人の話を聞く。当たり前の常識だが、子供に説くのも大事だが大人も改めてそれを認識してそれに基づく正しい行
  • アベ政治はクーデター
    竹林泉水 (07/19)
    政権を握っているのでクーデタだと言えるのでは

    しかし、安倍晋三の頭の中の辞書には、民主主義の言葉はあるが、政治家としての誠実さをなかなか感じることができないので
  • アベ政治はクーデター
    雲と風 (07/18)
    勉強になりましたが、「安倍政権はクーデター」でしょうか? 権力と威嚇によるテロリズムだと思います。内閣府の中の一派が壊憲と日本の民主主義制度の堕落無力化を共謀し
  • 教育福祉などへの株式参入は
    竹林泉水 (07/12)
    なんでも自由競争になれば、サービスの質が向上すると考えるのは間違いで、鉄道などで見ると都市部はサービスが向上するが、過疎部では反対で最悪の場合は撤退になります。
  • 教育福祉などへの株式参入は
    アジシオ次郎 (07/10)
    おはようございます。

    教育や福祉に株式参入することは、教育や福祉をビジネスに利用しかねないし、アメリカ式の市場主義経済に基づく価値観を正当化しかねないです。た
  • 食べることは殺生をすること
    竹林泉水 (07/06)
    日本人は頂きます・ご馳走様と日本人なら誰でもいいますが、外国の方はどうなのでしょうか。キリスト教のクリスチャンなら食前食後の祈りがあります。
    私は中高とミッショ
  • 食べることは殺生をすること
    アジシオ次郎 (07/05)
    こんにちは。

    人間は生きる為に他の生物の命を奪わなければいけない。と言う「原罪」を背負っている以上、食べると言うことはそうなのかも知れないです。動物の命を奪い
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