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民主主義 文部省著作 4

民主主義 文部省著作

第十一章 民主主義と独裁主義

二 民主主義に対する非難
すべての人間が個人として尊厳であり、自己の個人を生かす自由と、自己の才能を伸ばす平等の機会とを持ち、文化的にも経済的にも、ともどもに平和で幸福な共同生活を営むようになるという民主主義の理想は、きわめて崇高なものであって、何人といえどもそれについて反対することはできない。もちろん、この理想を完全に実現するまでは、人類はまだまだ遠いいばらの道を歩んでいかなければならないであろう。しかし、民主主義は、過去数世紀にわたってこの理想の実現に向かってあらゆる努力を重ねてきたし、その方向に向かって、既に多くの輝かしい成果をあげてきたのである。
けれども、その反面またわれわれは、民主主義が歴史上決して常にただ支持され、賞賛されて来たのではなく、むしろ、あらゆる非難を浴びながら発展して来たものであるといことを忘れてはならない。
イギリスで民主主義的な革新が行なわれ、続いてアメリカに独立戦争が起こり、更に、フランスンに大革命が起った当時には、それまで特権をほしいまゝにしていた連中は、民主主義を憎み、これに激しい非難を加えた。その後になって、民主主義に対する批判はいろいろな思想家や評論家によって行われた。ことに、第一次世界大戦後のヨーロッパの政治情勢が険悪になったころには、「民主主義の危機」ということがほとんど通りことばとなった。そうして、イタリアにはファシズム、ドイツにはナチズムが起こり、民主主義に対して総攻撃を加えるにいたった。
民主主義の反対者が一番強く非難する点は、多数決の原理である。民主主義は、どれが最も正しい政治の方針であるか、国民全体の幸福を増進するにはどうすればよいかについて、いろいろな意見が対立した場合、多数の支持する意見を採用してそれを実行すうる。そうして、政治の問題について意見を述べ、投票を行う権利をできるだけ拡大して、なるべくおゝぜいの国民が政治に参与しうるようにしむける。しかし民主主義の反対者に言わせると、そのようにして得られた多数の結果は、無知な、目先の見えないおゝぜいの人々の意見によって、政治の方針を左右することになる。群衆心理によって動かされ、目前の利害のみ執着する大衆は、たゞ「数」が多いとういうだけで、たいせつな政治の問題をかってに片づけてしまう。これに対して、すぐれた識見を有する人々の考えは、少数であるがゆえに葬り去られることにならざる得ない。それは、「頭かずの政治」であり、「衆寓政治」である。民主主義に反対する者は、そういって、鬼の首を取ったように民主政治をたゝきふせてしまおうとする。
民主主義に対するこのような非難から導き出されるものは、独裁主義である。多数決によって行われる民主政治を衆寓政治であるといって非難する立場は、それに代るべき政治の根本として「指導者原理」を主張する。独裁主義者が主張するところの指導者原理によれば、いかにおゝぜいの人々が雷同する政治の方針であっても、全体の利益に反するような政策は排斥されなければならない。あるいはまた、せっかく政府の思いきった政策を実行しようとしても、反対党が数を頼んでじゃまをしたりするようでは、政治の危機を切りぬけて行くことはできない。だから、そのような多数支配の代りに、最も有能な最も賢明な、最も決断力に富んだ、たゞひとりの人物を押し立てて、その「指導者」に政治の絶対権を与え、国民は指導者の命令通りに足並みをそろえてついて行くのが一番よいというのである。かくて、独裁主義は、政治に対する国民の批判を封じ、政党の対立を禁じ、議会政治を否定して、絶対権力を握った独裁者にすべてを任せ、まっしぐらに一つの政策を貫いて行こうとする。
独裁主義が民主主義に対して非難を加えるもう一つの点は、「個人主義」である。民主主義は、すべての人間を個人として平等に尊重し、他人ン自由を侵さない限りにおいての各人の自由を保障する。しかし、独裁主義者にいわせると、各個人がそれぞれその自由を主張し、かってに自分たちの利益を求めることを許すと、社会全体の統一が乱れ、国家や民族の利益がないがしろにされる。かれらによると、重んぜられるべきものは、個人でなく国家全体であり、民族全体だる。個人は全体の部分であり、全体の部分としての価値しか持たない。独裁主義は、そのように論じて個人主義や自由主義を攻撃し、その代りに、「全体主義」を主張する。独裁者の命令のままに、各人は自己の利益も、あるいは自己の生命をさえも、喜んで全体のために投げ出さなければならないと要求するのは、このような全体主義の結論にほかならない。
民主主義が、古くはギリシャやローマに始まっているように、独裁主義もまた古い歴史を有する。ギリリャ時代に専制王があったし、ローマの共和制末期にも武断的独裁者があらわれて、ついに絶対君主制を確立してしまった。現代における独裁主義は、だれでもが知っているように、第一次世界大戦後のイタリアおよびドイツに起り、基礎の弱いそれらの国々の民主主義を押しのけて、政治の実権を握った。それと同じような風潮が日本の政治を支配し始めたのは、昭和六年の満州事変のころからである。この政治の独裁化は、昭和十二年の日華戦争によって更に前進し、昭和十六年の太平洋戦争の開始とともにますます拍車を加えるにいたった。しかも、日本のファシズムは、ナチス張りの全体主義をとなえながら、その表面に国粋主義の粉飾をほどこし、民主主義や自由主義を攻撃して「滅私奉公」の道徳を国民に強要した。その態度は、イタリアやドイツの独裁主義と異ならなかったのである。


安倍政権になり、その政治の進め方をみると、安保法制関連法案の審議では質疑に対して真正面から答えようとせず。それに批判的なマスコミなどには、こらしめないといけないということを憚らなくなっています。また、安保法以外をみても、沖縄基地問題や労働者派遣法、TPPや原発問題、新国立競技場などで、多数の国民の声に耳をかたむけようとしないです。国民は目前のことだけ見、一部だけを見て全体を見れないと言って無視しています。そして、私が責任者だ決断する時は決断する。木ばかりを見るより森を見なくてはならない、などなどここに書かれている独裁者とぴったと符合する所が多いです。また昨日もかいたが、国民の批判を封じるために、国民の情報源の一つであるマスコミに対しては、自分たちの都合の悪いことを報道すれば、懲らしめないといけないという。いままで、自民党は今まで多様性があったから、与党としてのバランスが取れていた。それが、全体主義のようになってしまっているように見える。
ただ、問題なのは、今国会で可決しようとしてる、安保法案だけではなく、他の労働者派遣法のように、他の法案にも国民を蔑にしている問題点がある。また、沖縄の辺野古の基地問題や原発問題、TPP、新国立競技場などなど、結論ありきの進め方は、民主政治として相容れないものです。そして、安倍政治の本丸として、憲法改正があるが、自民党の憲法草案とこの1948年に書かれた文部省教科書の「民主主義」を読むと、日本は今後180度の舵を切って歴史を作ってしまうように思えてならないです。

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  • 首相は国民の生活をどこま思っているのか
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