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謡曲 望月

能 望月

あらすじ
信濃の国の住人安田の荘司友春の家臣、小沢の刑部友房は所用があって都にいる間に、主人の荘司友春が望月秋長と口論の末殺害されたことを聞き、直ちに帰国の途についた。しかし、自らの命も狙われていることを耳にしたので、一時難を避けるため帰国をせずにいた。そこで近江国の守山で甲屋という旅館を設けて暮らしていた。
友春の妻は、夫の討たれた後は頼りとするすべもなく、友春の遺児花若の手を引いて都に上ろうと故郷を出で、守山の宿にたどりつき、甲屋に泊まる。こうして主従は奇しくも再会し、涙を流して喜びあった。丁度そこに計らずも敵の望月秋長が、都から故郷に下る途中で甲屋に宿を取った。
友房はかたき討ちの絶好の機会として友春を打つ謀を企て、その夜、旅の徒然をなぐさめると称し、友治の妻は盲御前として曾我兄弟が一萬と箱王と呼ばれていた時の敵討成就の曲舞を謡い、花若は八撥を打ち、友房も獅子舞を舞い興を添えます。望月の油断して、居眠ったすきを見ておどりかかり、花若と二人で敵討ちを成し遂げます。

この演目は私はまだ、一度見たいと思っていましたが鑑賞したことがない曲です。この曲について調べているうちに是非とも鑑賞したい思いがつのります。
能は普通、ワキが初めに名乗りをあげて語りだしますが、この望月は、シテから語り出します。また、能には珍しくシテに台詞言葉しかなく、謡のないまったくの台詞劇で、シテは言葉の運び具合や調子に乙り張りをつけ友房を演じます。
地謡の一番の聞かせどころは何といっても、子方と荘司友春の妻のシテツレが謡うサシ「ここに河津の三郎が子に一萬箱王とて、兄弟の者のありけるが」に続く、仇であるワキの望月秋長の前で、子方とシテツレが盲御前と偽って、出し物として曽我兄弟の敵討ちの話を始める場面でしょう。一つ私が辻褄が合わないように思うのが、子やくの歳です望月が主君を殺した咎で、今日に十三年間も京に留め置かれえていたのですから、子は当時としては立派に大人として振る舞えたのですが、演じる子方は年少が多いように感じます。

謡曲 望月 台詞
シテ「かやうに候ふ者は。近江の国守山の宿甲屋の亭主にて候。扨も某本国は信濃の国の者にて候ふが。さる子細候ひて此甲屋の亭主となり。往来の旅人を留め申して身命をつぎ候。今日も旅人の御通り候はゞ。御宿を申さばやと存じ候。
ツレ子方次第「波の浮鳥住む程も。/\。した安からぬ心かな。
ツレサシ「これは信濃の国の住人。安田の庄司友治の妻や子にて候。さても夫の友治は。同国の住人望月の秋長に。あへなく討たれ給ひし後は。多かりし従類も散り%\になり。頼む木蔭も撫子の。花若ひとり隠し置かんと。敵の所縁の恐ろしさに。思子を伴ひ立ち出づる。
二人下歌「いづくとも定めぬ旅を信濃路や。月を友寝の夢ばかり。/\。名残を忍ぶ古里の。浅間の煙立ち迷ふ草の枕の夜寒なる。旅寝の床の憂き涙守山の宿に着きにけり守山の宿に着きにけり。
ツレ詞「急ぎ候ふ程に。近江の国守山の宿に着きて候。此処にて宿を借らばやと思ひ候。いかに此家の内へ案内申し候。
シテ「誰にてわたり候ぞ。
女「これは信濃の国より上る者にて候。一夜の宿を御かし候へ。
シテ「易き間の事にて候。此方へ御入り候へ。不思議やなこれに留め申して候ふ御方を。いかなる人ぞと存じて候へば。某が古の主君の北の御方。幼き人
は御子息花若殿にて御座候ふはいかに。あら痛はしの御有様や候。頓て某と名乗つて力を附け申さばやと存じ候。いかにお旅人に申すべき事の候。信濃の国よりと仰せ候ふにつきて。古御目にかゝりたるやうに存じ候。
女「いやこれは行方もなき者にて候ふほどに。思もよらぬ事にて候。
シテ「何を御つゝみ候ふぞ。先某名のつて聞かせ申すべし。これこそ古御内に召し仕はれ候ひし。小沢の刑部友房にて候へ。
ツレ「さては古の小沢の刑部友房か。あら懐しやとばかりにて。涙にむせぶばかりなり。
子方「父に逢ひたるこゝちして。花若小沢に取りつけば。
シテ「別れし主君の面影の。残るも今は怨めしや。
子方「こはそも夢か現かと。主従手に手を取り交し。
地上歌「今までは。行方も知らぬ旅人の。/\。三世の契の主従と。頼む情もこれなれやげに奇縁あるわれらかな/\。
シテ詞「あれなる一間に御入りあつて御休あらうずるにて候。
ワキ次第「帰る嬉しき故里を。/\。誰憂き旅と思ふらん。
詞「これは信濃の国の住人。望月の何某にて候。さても同国の住人。安田の庄司友治と申す者を。某が手にかけ生害させて候ふ科により。此十三年が間
在京仕り候ふ処に。されども緩怠なきよし聞し召し開かれ。安堵の御教書を賜はり悦の色をなし。只今本国信濃に下向仕り候。急ぎ候ふ間。近江の国守山の宿に着きて候。今夜は此宿に泊らばやと存じ候。いかに誰かある。
狂言「御前に候。
ワキ「今夜は此宿にとまるべし。宿を取り候へ。又存ずる子細のある間。某が名をば申すまじく候。
狂言「畏つて候。いかに此家の主の渡り候ふか。
シテ「誰にて御座候ふぞ。
狂言「これは信濃の国へ御下向の御方にて候。御宿を申され候へ。
シテ「心得申し候。さて御名字をば何と申す人にて御座候ふぞ。
狂言「これは信濃の国に隠れもなき大名。望月の秋長殿では御座ないぞ。
シテ「苦しからず候。此方へ御入り候へ。
狂言「心得申し候。いかに申し上げ候。此方へ御通り候へ。
シテ「言語道断の事。我頼み申して候ふ人の北の御方。同じく御子息花若殿此家にとゞめ申して候ふ所に。花若殿御親の敵。望月が泊りて候ふ事は候。やがて此由申し上げばやと存じ候。や。いかに申し候。不思議なる事の候。今夜此処に望月が着きて候。
子方「何望月と申すか。
シテ「暫く。あたり近く候。まづ静まつて聞しめされ候へ。只今申す如く。望月が此家に泊りて候。是は天の与ふる所と存じ候。いかにもして今夜の中に。御本望達せさせ参らせうずるにて候。御心やすく思しめされ候へ。きつと思案仕りたることの候。今頃此宿にはやり候ふものは盲御前にて候。何の苦しう候ふべき。夜にまぎれ杖にすがり。花若殿に御手を引かれさせ給ひ。盲の振舞にて座敷へ御出で候へ。某彼の者に酒を勧め候ふべし。又何にても候へ御謡ひあれと申し候はゞ。そと御謡ひ候へ。花若殿は八撥を御打ちあらうずるにて候。某は獅子舞をまなび。其まぎれに近づきて。本望を遂げさせ申さうするにて候。
ツレ「ともかくもよきやうに計らひてたまはり候へ。
シテ「何事も某に御任せ候へ。
ツレ子方物着「。
ツレサシ「嬉しやな望みし事のかなふよと。盲の姿に出で立てば。
子方「習はぬ業も父のため。
女「竹の細杖つきつれて。
地「彼の蝉丸の古。/\。たどりたどるも遠近の。道のほとりに迷ひしも。今の身の上も。思はいかで劣るべき。かゝる憂き身の業ながら。盲目の身の習。歌きこしめせや旅人よ聞しめせや旅人。
シテ詞「いかに申すべき事の候。
狂言「何事にて候ふぞ。
シテ「此家の亭主にて候ふが。めでたき御下向にて候ふ間。御祝の為に酒を持たせて参りて候。然るべきやうに御申し候へ。
狂言「心得申し候。いかに申し上げ候。此家の亭主御下向めでたきよし申し候ひて。御樽を持たせ参りて候。
ワキ詞「此方へと申せ。
狂言「畏つて候。此方へ御参り候へ。又これなる人達はいかなる人にて候ふぞ。
シテ「さん候是は此宿に候ふ盲御前にて候。かやうの御旅人の御着の時は。罷り出で謡などを申し候。御前にてそと御うたはせ候へ。
狂言「日本一の事にて候。やがて申し上げうずるにて候。いかに申し上げ候。
ワキ「何事ぞ。
狂言「あれに候ふは。此宿にある盲御前にて候ふが。けしからず面白く謡ふ由を申し候。謡はせられ候へ。
ワキ「汝所望し候へ。
狂言「畏つて候。なうこれなる人たち。御所望にて候ふぞ面白からんずる所を一節御謡ひ候へ。
ツレ「一万箱王が親の敵を討つたる処をうたひ候ふべし。
狂言「いや/\思も寄らぬことにて候。
ワキ「何事を申すぞ。
狂言「これなる人達に謡を所望仕り候へば。一万箱王が親の敵を討つたる所を謡はうずるよし申され候ふ程に。御前にてはいかゞと存じいやと申して候。
ワキ「何の苦しう候ふべき急いで謡はせ候へ。
狂言「さらば今の仰せられたる所を御謡ひ候へ。
ツレクリ「それ迦陵頻伽は卵の内にして声諸鳥にすぐれ。
地「鷙といふ鳥は小さけれども。虎を害するちからあり。
ツレサシ「こゝに河津の三郎が子に。一万箱王とて。兄弟の人のありけるが。
地「五つや三つの頃かとよ。父を従弟に討たせつゝ。既に年ふり日を重ね。七つ五つになりしかば。いとけなかりし心にも。父の敵を討たばやと。思の色に出づるこそ。げに哀には覚ゆれ。
クセ「ある時おとゞひは。持仏堂に参りて。兄の一万香を焼き。花を仏に供ずれば。弟の箱王は。本尊をつく%\とまもりて。いかに兄御前きこしめせ。本尊の名をば我が敵。工藤と申し奉り。剣を堤げ縄を持ち。われらを睨みて。立たせ給ふが憎ければ。走りかゝりて御首をうち落さんと申せば。兄の一萬これを
聞きて。
ツレ「いはげなや。いかなる事ぞ仏をば。
地「不動と申し敵をば。工藤といふを知らざるか。さては仏にてましますかと。抜いたる。刀を鞘にさし。宥させ給へ南無仏。敵を討たせ給へや。
子方詞「いざ討たう。
狂言「おう討たうとは。
シテ「暫く候。何事を御騒ぎ候ふぞ。
狂言「御用心の時分にて候ふに。是なる幼き者がいざ討たうと申し候ふ程に候ふよ。
シテ「子細を御存じ候はぬ程に尤にて候。此者の謡を申したる後にては。また幼き者八撥を打ち候。其八撥を打たうずると申す事にて候。
狂言「日本一の事頓て打たせうずるにて候。いかに申し上げ候。これなる幼き者が八撥を打つべきよしを申し候。
ワキ「急いで打たせ候へ。又亭主は何にても能はなきか。
子方「獅子舞を御所望候へ。
ワキ「あら面白の事を申すものかな。いかに亭主。是なる幼き者の申すは。亭主は獅子舞が上手なる由を申し候。そと一指舞ひ候へ。
シテ「これは幼き者の条なき事を申し候。思もよらぬ事にて候。
ワキ「ひらに舞うて見せ候へ。
シテ「此上は御意にて候ふ程に。そと御前にて舞はうずるにて候。此まゝにては如何にて候ふ間。獅子頭を被きてまゐらうずるにて候。其間にこの幼きものに八撥を打たせ候ふべし。皆々かう渡り候へ。

中入「。

地(謡掛)「獅子団乱旋は時を知る。雨叢雲や。騒ぐらん。
羯鼓「。
乱序「。
獅子舞「。

上「余りに秘曲の面白さに。/\。猶々めぐる盃の。酔も勧めばいとゞ猶。眠もきたる。ばかりなり。
シテ「さる程に/\。
地「折こそよしとて脱ぎおく獅子頭。又は八撥打てや打てと。目を引き袖を振り。立ち舞ふけしきに戯れよりて。敵を手ごめにしたりけり。此年月の怨の末。今こそ晴るれ望月よとて思ふ敵を討つたりけり。
キリ「かくて本望遂げぬれば。/\。かの本領に立ち帰り。子孫に伝へ今の世に。その名隠れぬ御事は。弓矢のいはれなりけり/\。

【詞章】

シテ「これは信濃の国の住人。安田の荘司友治のみ内にありし。小沢の刑部友房と申す者にて候。さても頼み奉りて候友治は。従弟の望月と口論し。あえなく討たれ給いて候。其おりふしは在京つかまつり候ところに。この事かくと承り候間。夜を日についで本国へ罷り下り候ところに。某を路次にて狙うよし申し候ほどに。本国へもかなわず。かなたこなたと仕り。今はふしぎに近江の国守山の宿に。甲屋の主と罷りなりて候。旅人のおん通り候わば。留めてばやと存じ候。
(次第)
ツレ子方「波の浮き鳥住むほども。波の浮き鳥住むほども。下安からぬ心かな。(地取り)
ツレ「これは信濃の国の住人。安田の庄司友治と申しし人の妻や子にてさむろう。さても夫の友治は。望月の秋長に。あえなく討たれおわします。多かりし従類も。みな散り散りになり。頼む木陰も撫子の。花若ひとり隠しおかんと。敵のゆかりの恐ろしさに。思い子をいざない立ち出ずる。
ツレ子方「いずくとも.定めぬ旅を信濃路や。月を友寝の.夢ばかり。
子方「月を友寝の夢ばかり。
ツレ子方「名残を慕う古里の。浅間の煙.立ちまよう.草の枕の.夜寒なる。旅寝の床の憂き涙.守山の宿に着きにけり.守山の宿に着きにけり。
ツレ「ようよう急ぎ候ほどにこれははや。近江の国守山の宿に着きて候。この所に宿を借らばやと思い候。いかにこの内へ案内申し候。
シテ「誰にてわたり候ぞ。
ツレ「これは旅の者にて候。一夜の宿をおん貸し候え。
シテ「心得申して候。さていずくよりいず方へおん通り候ぞ。
ツレ「これは信濃の国より都へのぼり候。
シテ「あら痛わしや。女性上臈のおん身として。幼き人を伴い。はるばるのおん心づくし推量申して候。今夜はおん心安くおん泊りあろうずるにて候。こなたへおん入り候え。言語道断。ただ今の旅人をいかなる人ぞと思いて候えば。いにしえのおん主安田の荘司友治の妻や子にて候はいかに。やがて名のって力をつけ申さばやと存じ候。いかに申し候。今は何をかつつみ申すべき。これこそいにしえ信濃の国にて召し使われし。小沢の刑部友房にて候。かいなき命ながらえて。三世の主君に会い奉れば。嬉し泣きの涙の.覚えずこぼれ候。
ツレ「さてはいにしえの小沢の刑部友房か。あら懐しやとばかりにて。涙にむせぶばかりなり。今は何をかつつむべき。これは安田の荘司友治の.妻や子供の果しなり。
子方「父に会いたるここちして。花若小沢にとりつけば。
シテ「われも主君にとりつきて。別れし主君の面影の。残るも今は懐かしやと。主従手に手を.取りくみて。
地謡「今さら人の別れさえ。思い出でられて.袂のかわく.隙もなし。今までは行くえも知らぬ.旅人の。行くえも知らぬ旅人の。三世の契りの主従と。頼む情もこれなれや.げに奇縁あるわれらかな.げに奇縁ある.われらかな。
ワキ「帰る嬉しき古里を。帰る嬉しき古里を。誰憂き旅と.思うらん。(地取り)
ワキ「これは信濃の国の住人。望月の秋長にて候。さても安田の庄司友治と口論し。念のう友治を討って候。この事上に聞こしめされ。聊尓の者とやおぼしめしけん。某が本領ことごとく召し離されて候を。この度在京つまかつり。よき縁をもって申しひらき候えば。本領ことごとく返し申されて候。安堵の御教書を頂き。ただ今本国へ罷り下り候。急ぎ候ふほどにこれははや。近江の国守山の宿に着きて候。いかに誰かある。しかるべき所に立ち越え宿を借り候え。また某が名字ばし申し候な。
狂言「心得申して候。さてもさても目出たき事かな。頼うだる御方の御訴訟も叶い。御下りは思召ままの御事にて候。さて御宿をとり申そうが、今夜は初宿ぢゃ程に。ずいぶん好い宿がとりたいものぢゃが。どこ許がよかろうぞ。やあやあ甲屋が大きな宿ぢゃと言うか。さらば甲屋に致そう。これは大きな宿かな。いかにこの内に案内申し候。
シテ「誰にてわたり候ぞ。
狂言「頼うだる御方を御伴申して候。御宿を申され候らえ。
シテ「安きことお宿参らしょうずるにて候。またあれにござ候おん方のご名字をば誰と申し候ぞ。
狂言「おおあれこそ、信濃の国の住人。望月の秋長ではおりないぞ。
シテ「いや苦しからぬ事こなたへおん入り候え。
狂言「心得申し候。
狂言「いかに申候。お宿をとり申して候。こうこう御通り候え。
ワキ「近頃お宿祝着申して候。
シテ「こなたへおん入り候え。言語道断、ふしぎなる事の候。花若殿のおん親の敵。望月がこれへ着いて候。やがてこの由申し候べし。いかに申し候。旅人にお宿参らせて候間。こなたへおん出で候え。いかに申し候。なんぼうふしぎなる事の候。ただ今この屋の内へ望月が着いて候。
子方「いかにもして討ってたまわり候え。
シテ「ああ音高や候。かように申す内に案じ出だしたる事の候。おん身はこの辺りの盲御前におんなり候いて。花若殿におん手を引かれ座敷におん出で候え。自然謡を所望申し候わば。何にてもおん謡い候え。われらは酒を持ちて参り候べし。
ツレ「嬉しやな望みし事の叶うぞと。盲の姿に.出で立てば。
地謡「かの蝉丸の.いにしえ。かの蝉丸のいにしえ。たどりたどるも遠近の。道のほとりに迷いしも。今の身のほどの。思いはいかで.まさるべき。かかる憂き身の業なれば.盲目の身の習い歌。聞こしめ召せや旅人よ。聞こしめ召せや.旅人よ。
シテ「これはこの屋の主にて候が。酒を持ちて参りて候。
ワキ「近頃祝着申して候。さて今の謡の声は誰にてわたり候ぞ。
シテ「さん候是はこの辺りの盲御前にて候が。おん旅人のござ候えば罷り出でて謡い申し候。
ワキ「さらば一節所望候え。
シテ「畏って候。何にても面白からん事を一節おん謡い候え。
ツレ「一万箱王が親の敵を討ったるところを謡い候べし。
狂言「いやいやそれは差合がある。余の事を御謡い候らえ。
ワキ「いや苦しからぬこと。ただ謡わせ候え。
狂言「畏って候。さあらばそのた次第、何にても一節御謡い候らえ。
地謡「それ迦陵頻はかいごの内にして.声諸鳥にすぐれ。鷙という鳥は小さけれども。虎を害する.力あり。
ツレ「ここに河津の三郎が子に。一万箱王とて兄弟の者のありけるが。
地謡「五つや三つの頃かとよ。父を従弟に討たせつつ。すでに日行き時来たって。七つ五つになりしかば。
ツレ「いとけなき身の心にも。
地謡「父の敵を討たばやと。思いの色に出ずるこそ.げに哀にぞ.覚ゆる。
〔クセ〕ある時おとといは。持仏堂に参りて。兄の一万香をたき。花を仏に供ずれば。弟の箱王は。本尊をつくづくとまもりて。いかに兄御前きこしめせ。本尊の名をばわが敵。工藤と申し奉り。剣をひっさげ縄を持ち。われらを睨みて。立たせたもうが憎ければ。走りかかりておん首を.うち落さんと申せば。兄の一万これを聞き。
ツレ「いまいまし。いかなる事ぞ仏をば。
地謡「不動と申し敵をば工藤というを知らざるや。さては仏にてましますかと。抜いたる刀を鞘にさし。許させたまえ南無仏.敵を討たせたまえや。
子方「いざ討とう。
狂言「討とうとは。
シテ「暫く。何をおん騒ぎ候ぞ。
狂言「いざ討とうとおっしゃるによっての事でござる。
シテ「いざ打とうとは羯鼓を打とうとのおん事候よ。
狂言「羯鼓ならば羯鼓とおっしゃらいぞ。聊爾なる事をおっしゃるに依っての事にて候。
ワキ「また亭主は何をつかまつり候ぞ。
子方「亭主には獅子をご所望候え。
ワキ「日本一の事を申す者かな。さらば羯鼓ののち獅子を舞うておん見せ候え。
シテ「某は獅子舞うたる事はなく候えども。御意にて候ほどに拵えて参ろうずるにて候。その間に幼き者に鞨鼓をおん打たせ候え。
<中入>
(子方物着)
(狂言独白)
狂言「いかに幼き人へ申し候。亭主の身ごしらえの内。羯鼓を打って御見せ候らえや。
子方「吉野初瀬の花もみじ。
地謡「更級越路の。月雪。
<羯鼓>
子方「獅子団乱旋は時を知る。
地謡「雨むら雲や。奏すらん。
<獅子ノ舞>
地謡「あまりに秘曲の面白さに。あまりに秘曲の面白さに。なおなおめぐる盃の。酔もすすめばいとどなお。眠りも来たる。ばかりなり。
シテ「さるほどにさるほどに。
地謡「おりふしよしとぬぎ置く獅子頭。または八撥を打てや打てやと。目をひき袖をふれ。立ち舞う気色に戯れ寄りて。敵を手ごめにしたりけり。
ワキ「こは何者ぞいかなる者ぞ。
子方「おん身の討ちし安田の荘司友治が。その子に花若われぞかし。
ワキ「さてまた亭主と見えしは誰なれば。かほどに我をばたばかりけるぞ。
シテ「小沢の刑部友房よ。
ワキ「あらものものしとひったてゆけば。
シテ「ひきゆする。
ワキ「振れども切れども。
シテ「放さばこそ。
地謡「この年月の怨みのすえ。今こそかえせ望月よとて.思う敵を討ったりけり。思う本望とげぬれば。やがて故郷に立ち帰り。かの本領を友治の。子孫に伝え今の世に。その名隠れぬおん事も。弓矢のいわれなるらん。弓矢のいわれ.なるらん。
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  • 独裁者の国会解散
    竹林泉水 (09/26)
    > 政策に反対表明するための無抵抗なデモ行進、座り込みや集会を無理に解散させようとする警察官たちが、職務とは言え反対する人たちを排除しようとするのを見るとむし
  • 独裁者の国会解散
    風と雲 (09/24)
    民主的な選挙で政権交代がなされるようになり、政府への反対で暴力を使うことは、民衆の支持を失い反発され逆効果になるようになりました。>政策に反対表明するための無抵
  • 独裁者の国会解散
    竹林泉水 (09/24)
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    第二次世界大戦でフランス政府はドイ
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    風と雲 (09/23)
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  • ギャンブル依存症に顔認証は問題
    アジシオ次郎 (09/09)
    こんにちは。

    いくらギャンブル依存症対策とはいえ、入場確認や顔認証システムを導入するのは一部から「プライバシーの侵害だ」と批判を浴びてもおかしくありませんね。
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    竹林泉水 (08/23)
    国際的な政治・外交問題は素人的な言い方をすれば、早い者勝ちで勝ち逃げすればセーフ的なところがありますね。
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