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謡曲 「頼政」

能 頼政

源三位頼政は、Wikipediaみると、「保元の乱と平治の乱で勝者の側に属し、戦後は平氏政権下で源氏の長老として中央政界に留まった。平清盛から信頼され、晩年には武士としては破格の従三位に昇り公卿に列した。だが、平氏の専横に不満が高まる中で、後白河天皇の皇子である以仁王と結んで平氏打倒の挙兵を計画し、諸国の源氏に平氏打倒の令旨を伝えた。計画が露見して準備不足のまま挙兵を余儀なくされ、そのまま平氏の追討を受けて宇治平等院の戦いに敗れ自害した」とあります。この能の場面は、その謀叛をおこした平等院に布陣して戦い自害した様子を、宇治の里に参詣した旅僧が、頼政の亡霊からその話を聞く様子が演じられています。

頼政 あらすじ
旅の僧が宇治の里に着き景色を眺めていると、老人が現れ此処の名所のいわれを教え、平等院へと案内します。扇の形に残されている芝の事を聞くと、源三位頼政が武運つたなく自害した場所であり、今日は丁度その命日にあたり、自分こそは頼政の幽霊であると名乗り消えます。旅の僧はそのちょうど通りかかった里人に頼政のことを詳しく聞き、哀れに思い霊を弔い読経します。法体の身に甲冑姿の老武者が現れ、高倉の宮を擁しての挙兵、宇治川を挟んでの決戦で平家に川を渡って攻められての敗退、そしえ平等院の芝の上に扇を敷き自害したことを語り、僧に回向を頼み草の陰に消えてゆきます。


台本と舞台展開
1:諸国一見の僧が都から奈良への途中の宇治の里を訪れ。景色を愛で、此の地の言われを知るのに里人が来るのを待つ。

ワキ詞「これは諸国一見の僧にて候。我此程は都に候ひて。洛陽の寺社残りなく拝み廻りて候。又これより南都に参らばやと思ひ候。
道行「天雲の。稲荷の社伏し拝み。/\。なほ行くすゑは深草や。木幡の関を今越えて。伏見の沢田見え渡る。水の水上たづねきて。宇治の里にも。着きにけり宇治の里にも着きにけり。
ワキ詞「げにや遠国にて聞き及びにし宇治の里。
詞「山の姿川のながれ。遠の里橋の景色。見所おほき名所かな。

2:一人の里の老人が現れ、老人は僧の求めに応じ、宇治の里の名所旧跡を教える。

詞「あはれ里人来り候へかし。
シテ詞呼掛「なう/\御僧は何事を仰せ候ふぞ。
ワキ詞「是は此所はじめて一見の者にて候。この宇治の里に於て。名所旧跡残なく御教へ候へ。
シテ「所には住み候へども。いやしき宇治の里人なれば。名所とも旧跡とも。いさ白波の宇治の川に。舟と橋とは有りながら。渡りかねたる世の中に。住むばかりなる名所旧跡。何とか答へ申すべき。
ワキ詞「いや左様には承り候へども。勧学院の雀は蒙求を囀るといへり。処の人にてましませば御心にくうこそ候へ。先喜撰法師が住みける庵は。いづくの程にて候ふぞ。
シテ「さればこそ大事の事を御尋ねあれ。喜撰法師が庵は。我が庵は都の巽しかぞ住む。
詞「世を宇治山と人はいふなり。人はいふなりとこそ。主だにも申し候へ。尉は知らず候。
ワキ詞「又あれに一村の里の見えて候ふは槙の島候ふか。
シテ「さん候槙の島とも申し。又宇治の河島とも申すなり。
ワキ「是に見えたる小島が崎は。
シテ「名に橘の小島が崎。
ワキ「向に見えたる寺は。いかさま恵心の僧都の。御法を説きし寺候ふな。
シテ「なう/\旅人。あれ御覧ぜよ。
歌「名にも似ず。月こそ出づれ朝日山。
地「月こそ出づれ朝日山。山吹の瀬に影見えて。雪さし下す島小舟。山も川も。おぼろおぼろとして是非をわかぬ景色かな。げにや名にしおふ。都に近き宇治の里聞きしにまさる名所かな/\。

3:老人は僧を平等院へ案内するが、僧は扇のように取り残された芝を不審異思い尋ねる。老人は、昔、宮戦で負けた源頼政が扇を敷いて自害した所で、名将の古跡〔扇の芝〕だと語る。

シテ詞「いかに申し候。此所に平等院と申す御寺の候ふを御覧ぜられて候ふか。
ワキ詞「不知案内の事にて候ふ程に。いまだ見ず候御をしへ候へ。
シテ「此方へ御出で候へ。これこそ平等院にて候へ。また是なるは釣殿と申して。おもしろき所にて候よく/\御覧候へ。
ワキ「げに/\おもしろき所にて候。またこれなる芝を見れば。扇の如く取り残されて候ふは。何と申したる事にて候ふぞ。
シテ「さん候此芝について物語の候。語つて聞かせ申し
候べし。昔この処に宮軍ありしに。源三位頼政合戦に打ち負け給ひ。この処に扇を敷き自害し果て給ひぬ。されば名将の古跡なればとて。扇のなりに取り残して。今に扇の芝と申し候。


4:僧は、文武に名を得た源三位頼政でも儚いものだと傷わしく思い、合掌して弔う。老人は僧の弔いを喜び、今日がちょうど宮戦の日に当たると述べ、実は自分は頼政の幽霊だと名のり消る。

ワキ「痛はしやさしも文武に名を得し人なれども。跡は草露の道の辺となつて。行人征馬の行くへの如し。あら痛はしや候。
シテ詞「げによく御弔ひ候ふものかな。しかも其宮軍の月も日も今日に当りて候ふは如何に。
ワキ「何と其宮軍の月も日も今日当りたると候ふや。
シテ「かやうに申せば我ながら。よそにはあらず旅人の。草の枕の露の世に。姿見えんと来りたり。現とな思ひ給ひそとよ。
地歌「夢の浮世の中宿の。/\。宇治の橋守年を経て。老の波も打ち渡す遠方人に。物申す我頼政が幽霊と名のりもあへず。失せにけり名のりもあへず失せにけり。


5:里人が現れ、僧の尋ねに応じて、頼政挙兵の経緯や宇治橋の合戦の様子などを語り、回向を勧める。
6:僧は頼政の霊を弔い、夢での再会を待つ。

ワキ詞「さては頼政の幽霊かりに現れ。我に言葉をかはしけるぞや。いざや御跡弔はんと。
歌「思ひよるべの浪枕。/\。汀も近し此庭の扇の芝を片敷きて。夢の契を。待たうよ夢の契を待たうよ。


7:法体の身に甲冑を装った姿で経を読んでほしいと言う老武者が現れる。僧は源頼政の幽霊だとし、弔いにより成仏疑いないことを伝える。

後シテ一声「血は琢鹿の河となつて。紅波楯を流し。白刃骨を砕く。世を宇治川の網代の波。あら閻浮恋しや。伊勢武者は。皆緋縅の鎧着て。宇治の網代に。かゝりけるかな。うたかたの。あはれはかなき世の中に。
地「蝸牛の角の。争も。
シテ「はかなかりける。心かな。
詞「あら尊の御事や。なほ/\御経読み給へ。
ワキ「不思議やな法体の身にて甲胃を帯し。御経読めと承るは。いかさま聞きつる源三位の。その幽霊にてましますか。
シテ詞「げにや紅は園生に植ゑても隠なし。名のらぬさきに。
詞「頼政と御覧ずるこそ恥かしけれ。たゞ/\御経読み給へ。
ワキ「御心やすく思し召せ。五十展転の功力だに。成仏まさに疑なし。ましてやこれは直道に。
シテ「弔ひなせる法の力。
ワキ「あひにあひたり所の名も。
シテ「平等院の庭の面。
ワキ「思ひ出でたり。
シテ「仏在世に。
地歌「仏の説きし法の場。/\。こゝぞ平等大慧の。功力に頼政が。仏果を得んぞありがたき。


8:頼政の霊は、宮戦の起こりから宇治川に陣を構えるまでの経緯、宇治川の橋合戦の様子、敵の武将・忠綱の攻め、対する防戦を仕方話で再現して見せる。

シテ「今はなにをかつゝむべき。これは源三位頼政。執心の波に浮き沈む。因果の有様あらはすなり。
地「抑治承の夏の頃。よしなき御謀叛を勧め申し。名も高倉の宮の内。雲居のよそに有明の月の都を忍び出でて。
シテ「憂き時しもに。近江路や。
地「三井寺さして落ち給ふ。
クセ「さるほどに。平家は時をめぐらさず。数万騎の兵を。関の東に遣はすと。聞くや音羽の山つゞく。山科の里近き。木幡の関を。よそに見て。こゝぞ憂き世の旅心宇治の河橋打ち渡り。大和路さして急ぎしに。
シテ「寺と宇治との間にて。
地「関路の駒の隙もなく。宮は六度まで御落馬にて煩はせ給ひけり。これは先の夜御寝ならざる故なりとて。平等院にして。暫く御座を構へつゝ宇治橋の中の間。引きはなし。下は河波。上に立つも。共に白旗を靡かしてよする敵を待ち居たり。
シテ詞語「さる程に源平の兵。宇治川の南北の岸に打ちのぞみ。閧の声矢叫の音。波にたぐへておびたゝし橋の行桁をへだてて戦ふ。味方には筒井の浄妙。
詞「一来法師。敵味方の目を驚かす。かくて平家の大勢。橋は引いたり水は高し。さすが難所の大河なれば。
詞「左右なう渡すべきやうも無かつし処に。田原の又太郎忠綱と名のつて。
詞「宇治川の先陣我なりと。名のりもあへず三百余騎。
地「くつばみを揃へ河水に。少しもためらはず。群れゐる群鳥の翅を並ぶる羽音もかくやと。白波に。ざつ/\と。打ち入れて。浮きぬ沈みぬ渡しけり。
シテ「忠綱。兵を。下知していはく。
地「水の逆巻く所をば。岩ありと知るべし。弱き馬をば下手に立てゝ。強きに水を。防がせよ。流れん武者には弓弭を取らせ。互に力を合はすべしと。唯一人の。下知に依つて。さばかりの大河なれども一騎も流れず此方の岸に。をめいてあがれば味方の勢は。我ながら踏みもためず。半町ばかり。覚えずしさつて。切先を揃へて。こゝを最期と戦うたり。さる程に入り乱れ。我も/\と戦へば。

9:頼政は敗戦を悟り「埋木の 花咲く事もなかりしに 身のなる果は あはれなりけり」と辞世の句を詠み、平等院の芝の上に扇を敷いて自害した自らの最期を語り、回向を頼んで草の蔭へと失せて行く。

シテ「頼政が頼みつる。
地「兄弟の者も討たれけば。
シテ「今は何をか期すべきと。
地「唯一筋に老武者の。
シテ「是までと思ひて。
地「是までと思ひて。平等院の庭の面。是なる芝の上に。扇を打ち敷き。鎧ぬぎ捨て座を組みて。刀を抜きながら。さすが名を得し其身とて。
シテ「埋木の。花さく事もなかりしに。身のなるはてはあはれなりけり。
地「跡弔ひ給へ御僧よ。かりそめながらこれとても。他生の種の縁にいま。扇の芝の草の蔭に。帰るとて失せにけり立ち帰るとて失せにけり。
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  • 安倍首相の愛国心とは
    本当に教員? (09/10)
    興味ある内容なので拝読したが「教育勅語」を親孝行等の道徳ではなく戦争に洗脳させるためだとか思い違いも甚だしい。
    貴方が現役の教員であれば授業中が退屈で眠気が襲っ
  • トランプは白人至上主義者か
    アジシオ次郎 (08/07)
    おはようございます。

    アメリカにおいてまた立て続けに銃乱射事件が起こったけど、テキサス州・エルパソでのケースは容疑者がヒスパニック系に対する憎悪感丸出しの書き
  • 商業捕鯨に思う
    竹林泉水 (07/11)
    調査捕鯨のための捕鯨業者への補助金は、毎年数十億だときくが、商業捕鯨になればそれはカットされるのだろうか。商業捕鯨で補助金を政府がだしていたら、反捕鯨団体はどう
  • 商業捕鯨に思う
    アジシオ次郎 (07/08)
    おはようございます。

    IWC(国際捕鯨委員会)を脱退して今月から商業捕鯨を再開した日本、組織として機能していないIWCへの反発から脱退して商業捕鯨再開に至った
  • 韓国への輸出優遇措置の見直
    竹林泉水 (07/05)
    菅官官房長官は徴用工問題に対する報復ではないとの趣旨の発言をしている。
    しかし、誰が見ても徴用工に対するもににしかみえない。
    それを白々しくそうではないといい、よ
  • 韓国への輸出優遇措置の見直
    アジシオ次郎 (07/05)
    おはようございます。

    韓国への半導体輸出規制という措置に踏み切った日本、でも韓国が徴用工問題を蒸し返すという日韓請求権協定に反する行為をしたことで、その見返り
  • 日本の報道の自由
    竹林泉水 (06/17)
    コメントありがとうございます
    まったくそう思います。
    民放は広告収入元のスポンサーからの収入があるので、その顔色を見るからしょうがないにしても、政権の顔色を見る必
  • 日本の報道の自由
    風と雲 (06/10)
    政権に不都合なことは隠す、曖昧にする、知らしめない。これは政権が世論を最も恐れっるからだ。現政権は硬軟取り混ぜた巧みなメディア操作と中身の無いパフォーマンスが功
  • 日本の報道の自由
    アジシオ次郎 (06/10)
    おはようございます。

    こういう指摘についてすぐに「内政干渉だ!」って反論も出てくるけど、日本の報道の自由度というか報道が健全かという点において先進国において❝
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